第43話

 僕達は予定していた時間よりも早く帰って来た。


 女子達の遠慮のない高ステータスと、生き物を殺す事に躊躇や精神的なトラブルが無かった事が幸いしたとも言えよう。


 何にせよ怪我がないのが1番である。


 訓練場で装備の点検・整備を済ませ遅めの昼食を取りる。


 僕の装備は指輪と石ころだけなので点検も何も必要がない。


 現地調達出来る、なんたるエコロジスト。



 食事中は専らダンジョンでの話だった。


「もう少し歯応えがあっても良かったわね、あれでは弱い者イジメみたいで自分の成長が分からないわ。」


「弱いなら弱いで、もうちょっと連携してきてくれないと。真っ直ぐ向かって来るだけじゃ戦闘訓練にもならないし。」


 深川と水沢はゴブリンとコボルドに歯応えと連携を求めている。


「遥さんの弓は凄かったですね、百発百中じゃないですか?ホーミング機能や連射機能も付いてるんですか?近々レーザーとか出る予定は?」


「真紀の魔法も。ズドォン・バァーン・ブォーン。」


 横手の中で長岡は人間性を失い、長岡は語彙力を失っていた。


「白魔法の出番、あんまりなかったね…。私も訓練頑張ったから見せたかったんだけど。」


 八戸は誰かが大怪我する事でも望んでいたのだろうか?


 だが僕の言葉で話題は一変した。


「皆、凄かったね。圧倒的だったじゃないか。僕も何か役に立てたら良かったんだけど。」


「「「「「誰が1番凄かった?」」」」」


「え゛っ?」


 答えるまでは許さないという期待の眼差しが圧力でしかない。


「いや、そもそも使ってる武器が違うんだし順序を付ける必要あるのかな?それにレベルを鑑定して貰うんだから、それを見れば一目瞭然でしょ?」


「………それもそうね。」


 そう深川が言うと女子達はヒソヒソと話し合いを始めてしまった。


 僕は蚊帳の外である。


 僕は蚊である。


 やがて結論は出たのか、


「今回、1番レベルが上がっていた子に今度プレゼントしなさいよ。」


と代表して水沢が言う。


うん、意味が分からない…。


「何で僕が用意するの?」


 素直に聞いてみる。


 すると水沢曰く、


「何よ?嫌なの?ご褒美や景品があった方が、やる気が出るってもんでしょ?」


との事。


 当然、寄生型レベリングをさせて貰っている僕は文句を言い返せない…。


「いえ、喜んで用意させて貰います。」


 城での生活や訓練場・初心者向けダンジョンなどでは、お金は必要ないので僕達に収入はなかったのだが、今後の中級者向けや上級者向けのダンジョンで、モンスターを倒したり宝を持ち帰ったりすると報酬が出る事になっているのだ。


 その頃にはステータスや異世界での一般常識も身に付いているであろうと言う事で、週に一度の休みは城下町に出る事も許されるようになるらしい。



 ちなみに、この世界の1年が360日で12ヵ月。1ヵ月が30日で1日が24時間、1時間が60分などの地球と類似している都合の良い仕様は、大昔の勇者の我儘によって定着したものであるらしい。


 曰く、1時間毎に休憩させろ。

 曰く、1日8時間は寝かせろ。

 曰く、週に一度は休ませろ。

 曰く、食事は日に3回決まった時間に食わせろ。


などである。



 同郷の人間が迷惑をかけて申し訳ないとは思うが、それでも良い仕事をしたじゃあないかと褒めてもあげたい。

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