第31話

 朝食後、一旦部屋に戻って準備をしてから訓練に向かう。


 今日は筆記用具も持っていく。


 時間があれば、またカインさんを捕まえるのだ。


 女子の見学や休憩中の兵士さんにも話を聞きたい。


 そもそも1日中など走っていられるものか。



 時刻は9時30分、少し早いが構わないだろう。


 訓練場に着くと既に動いている何人かの兵がいた。


 勤勉な事で。


 そして女子達も既に来ていた。


「さすがに今日はギリギリじゃないのね。」


 深川に言われる。


「そうだね、やっと時計を貰えたからね。」


「理斗君の担当のメイドさんは、そんなにお願いしないと時計も付けてくれないの?私達の部屋は時計なんて最初から付いてたよ?」


 八戸が心配そうな顔をしている。


「どうなんだろう?使う予定ではなかった部屋だったり、男が来るとは思ってなかったとかで間に合わなかったんじゃない?やっぱり女の子が男の部屋に起こしに来るのも抵抗あると思うしね。」


「香川が下に見られてんじゃないの?」


 水沢が呆れた様子で言う。


「確かにロザリー様が上である事は今日はっきりしたけど…。」


「理斗さん…。」


「理斗…。」


 横手と長岡に残念な物を見るような目をしている。


 何故か?


 生憎と心当たりがない。



 そして1時間後、僕は清々しい程の空の下で横になっていた。


 昨日よりもスローペースで長距離を走った結果である。


 1日で何かが変わる筈もないか。



 10分ほど休んでからノソノソと歩き始める。


 情報収集の時間だ。


 カインさーん、いーませんかぁー?


 カインさん不在のために休憩中だったイケメンのロイさんに話を聞く、聞きたかったのは訓練でステータスが伸びるのかどうか?


 ロイさん曰く、


 ステータスは簡単に確認出来ないとの事。


 ただ毎日のように訓練していれば体格は良くなって行くし、それなりにスタミナも付くらしい。


 そして数字上の変化は分からないけれど、技術は間違いなく身に付くそうだ。


 ロイさんに礼を言い歩き出す。



 次は深川とカティアさんの元へ。


 何人かの兵士と共に深川は素振りをしていた。


 木製ではなく金属の剣で。


 片手に盾を持った状態で重くないのだろうか?


 カティアさんの方を見ると僕を見て青ざめておられる。


 何かあったのだろうか、我が同志よ?


「カガワ殿、本日は朝食をどちらで?」


「ふぇ?1階の食堂で頂きましたけど、何かマズかったですか?」


「カガワ殿が来てくれないと王女殿下お二人は沈み込み、パオラ様は…ブリザードでございました。」


「キングは?我らの同志キング・シリウスは?」


「シリウス様は…ご想像通り凍り付いておられました。私は普段なら食べ終わっているはずの時間に訪れたのです。分かりますか?誰一人として料理に手を付けていない食卓の空気の重さが。何故です?何故、テラスへ行かれなかったのです?担当のメイドから連絡があったのでしょう?」


「担当メイドから連絡?いえ?一言も頂いておりませんけど?たぶん今日は6時くらいから起きてますけど、何も聞かされておりませんが…?」


「えっ?」


「えっ?」


「えっ?」




 カティアさんの言っているメイドとは、もしやロザリー様の事でしょうか?

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