第30話
密かに結束されたメロメロ連合はさておき、ユリスさんとは毎日20時に資料の閲覧を約束した。
本日は諸事情(連合発足)により遅くなってしまったので解散の運びとなった。
カティアさんは王様を送って行かれるらしく、ユリスさんは少しでも資料の整理をする模様。
僕は1人で自室に戻ると時刻は22時を回っていた。
残りのバッテリーの僅かな携帯の明かりを頼りに、前日のノートに水沢と長岡が訓練で取り乱した事と持ち直した事を付け加える。
早めに解決しなければならない事が増えてしまったようだ。
とりあえず起きてやらなければならないのは、部屋の時計と蝋燭の交渉からか…。
ロザリーめ!
翌朝、携帯のバッテリーは尽きていた。
いよいよ時間が分からない。
薄暗い中ゴソゴソと起きだし、顔を洗いに向かう。
食堂前を通り掛かった時、僕は怨敵を見付ける。
「ロザリーさん、おはようございます。」
「カガワ様、おはようございます。今朝は随分とお早いのですね。」
「すいません。部屋に時計がないもので。寝坊してご迷惑をお掛けしては申し訳ないですし。なるべく数時間置きに目が覚めるように深く眠らないように心掛けているんです。」
他のメイドさんが周りにいたので大きめの声で答えておく。
狙い通り注目を集めたようだ。
「そ、そうでしたか。す、すぐにご用意して差し上げますね。」
怨敵ロザリーが冷や汗を流しているようなので、
「ありがとうございます。元の世界より持ち込んだ時計で少しずつ時間を確認していたのですが、遂に動かなくなってしまい困っていたのです。」
あっ、驚いて口を押さえているメイドさんがいる。
「後、夜に書き物をしているのですが良く見えず苦戦しているので、重ねて大変申し訳無いのですが蝋燭と燭台もご準備頂けないでしょうか?」
ジャパニーズサラリーマン顔負けの腰の低さで頼んでみる。
「かしこまりました。後ほどお持ち致します。」
顔を引きつらせながらもマニュアル通りの返事が返って来る。
さすがだ。
やはり彼女もプロフェッショナルである。
「本当にお手数をお掛けします。時計や蝋燭など我儘ばかり言いまして、申し訳ありませんが宜しくお願いします。」
それでも丁寧な態度は崩さない。
先の遣り取りで、もう僕は彼女に負けを認めてしまっていた。
王様ですら怯ませたジャパニーズスタイルが通用しなかったのだ。
彼女は宰相閣下並みの強者だ。
ならば礼を尽くそう。
もう別に良いじゃないか、立場改善は諦めよう。
僕の方が立場が下でも何の問題がある?
それでは失礼しますと頭を下げ、僕は顔を洗いに向かう。
食堂が騒がしかったのは気のせいだろうか?
顔を洗って着替えを済ませ、暫くするとノックの音がする。
「どうぞ、鍵は開いてます。」
「失礼します。時計と蝋燭をお持ちしました。」
とロザリー様がご降臨された。
何故か美しいロゼさんもご一緒のようだ。
「わざわざ、ありがとうございます。場所さえ教えて頂ければ私の方で取りに向かったのですが。お手数をお掛けして申し訳ございません。」
「あ、あの、カガワ様?」
「はい、何でしょうか?ロザリー様?」
「ロザリー?どういう事か説明して貰えるかしら?」
「すみません、ロゼさん。ご挨拶が遅れまして、おはようございます。」
「お、おはようございます、カガワ様。すみませんが、ロザリーを連れて行っても宜しいでしょうか?」
「どうぞどうぞ、こちらこそお忙しい中お時間を取らせてしまいまして恐縮です。」
2人が退室された後、残されていた時計を確認すると丁度8時を回ったところだったので、食堂へ向かい朝食を頂いた。
昨日とは違い、安らぎの朝食だったと心から思う。
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