第27話

 そこからは女子と別れ、東の塔へ向かい自室に用意されていた部屋着を持って入浴。


 そして夕食。


 やはり夕食は美味かったのだが、風呂は思っていたより狭かった…。


 先代までの勇者に問いたい。


 何故、食事は改善されていて風呂事情は放置なのか?



 そして未だ僕の部屋に時計はない。


 頼み忘れた僕も問題だが、ロザリーさんも悪いと思う。


 何とかバッテリーの生きている携帯は20時を表示しているが。



 そこに控えめなノックの音が聞こえる。


 ロザリーさんだろうか?


「はい、鍵は開いてますよ。」


「………。」


 返事はない。


 ただの屍だろうか?


 恐る恐るドアを開ける。


 すると何ということでしょう。


 カティアさんとユリスさん、王様がいらっしゃるではありませんか。


 あぁ、やんごとない方々は確かご自身でドアを開けないのでしたね。


 聞いた事がございます。



「こんばんは、例の件ですか?」


「訓練で数名の勇者が取り乱したと耳にした。君が恐れていた事を考えれば早い方がいいと思ってな。やはり、間違いないか?」


「ええ、おそらくですが…」


「では、場所を変えよう。」


 僕は王様達の後に付いて行く。


 辿り着いたのは西の塔の地下だった。


 様々な怪しい器具・椅子が所狭しと並んでいる。


 やっぱり拷問部屋じゃねぇか。



 部屋の中央にあるテーブルに4人で座る。


 机上には大量の資料が並んでいた。


「さて、何から話したものか。」


「まずは僕が感じている違和感について話してもいいですか?その後で意見や感想を聞かせて貰うのは、どうでしょう?」


「分かった。聞かせてくれ。」


 王様が答えるとカティアさんとユリスさんも頷いている。



 僕は簡潔に伝えた。


 今の彼女達は何処か異常だと。


 誰からも帰りたいなどと言う言葉を聞いていない事。


 元の世界の事を考えないように意識操作されているのではないかと。


 僕が元の世界の事を考えられて彼女達が考えられないのは、ステータス値やスキルが関わっているのではないかと?


 モンスターの存在や戦争、おおよそ争い事と無縁の世界から来た女子達が、余りにも死や怪我や病気に無頓着すぎると。


 訓練中ならまだしも戦闘中、もしダンジョンの中や戦時中に郷愁の念に駆られでもすればパニックになるであろう事。


 それは余りにも危険で、本人だけでなく周りにも死の危険が及ぶ事を意味する事。


 3人は黙って話を聞いてくれた。



「なるほど、君が懸念している事は分かった。だが彼女達が勇者としての使命感に駆られているという事ではないのか?」


 勇者としての使命感か。


 確かに聴こえはいいのだが…、


 それを植え付けられた可能性もあるのかも知れない。



 では、僕はどうだろう?


 僕にそんな物、これっぽっちもないのは何故だ?

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