第26話
現在15時過ぎくらい。
本来であれば16時30分から17時までが訓練に使われる時間らしいが、今日は初日である事と2人の体調に不安がある事を理由に切り上げさせて貰った。
4人で深川と八戸を迎えに行く。
今更ながら女子を単独にするのは危険と判断したのだ。
深川は訓練所の右側奥で剣の稽古をしているはずだ。
彼女は簡単に見付かった。
カティアさんと剣を撃ち合っていたのだ。
見惚れるような見事な斬り合い。
とても素人のそれとは思えない。
やがて僕たちに気付いたようで、こちらへ駆け寄って来る。
「どうだったかしら?私の腕前は?」
「凄いね、剣道とは違う動きでしょ?調整したくらいで今の動きが出来るもんなの?」
「やっぱり目の付け所が違うわね。全くの別物を1から身に付けたのよ。」
余計に凄いわ。
「いや、もう言葉にならないよ。僕なんて今日は走って倒れただけだったよ。」
「安心なさい。わたしが守ってあげるから。」
僕が言いたかったねぇ、その言葉。
「それよりも随分と早いけれど、何かあったのかしら?」
僕は体調面や精神面での不安を説明し、深川にも早めに切り上げる事を提案した。
やはり、自分でも気付かないうちに消耗している事はありえるのだからと。
何とか深川を説得しカティアさんに挨拶をしてから宿舎に向かう。
八戸は2階にいるはずだ。
室内では座学中なのか難しい話が聞こえる。
「ですから、回復魔法や万能薬のない地球では外科手術によって病巣を取り除いて、人工の臓器移植などを利用します。」
「しかし、それは神の所業では…?」
座学ではなく現代医学のレクチャーであった。
神様と来たか。
「勇者様の世界では、既に寿命以外で人が死ぬ事のないのですね。何と素晴らしい。」
キーファさんは感動しているが、そんな事はない。
戦争・紛争・事件・事故・自殺・虐待、
食事を与えないだけでも子供は死ぬのだ。
返答に困っている八戸の横から声をかける。
「すみません。初日の訓練で予想以上に疲れているものが出まして、今日のところは早めに切り上げようという話になったので彼女を迎えに来たのですが。」
「そうでしたか。八戸様、本日はとても興味深い話を聞かせていただきました。ありがとうございました。」
「いえ、こちらこそ。」
「体調不良って大丈夫だったのかな?里斗君の事?」
「僕は走ってただけで、ただの運動不足。水沢と長岡の様子が気になってね。急に青ざめて取り乱したらしいんだ。」
本人達に聞こえないよう少し小声で伝える。
「そうなんだ、私の方でも様子見ておくよ。」
「そうしといて、お願いしとく。」
だいたい16時30分くらいだろうか、
城に辿り着くとロザリーさんが待っていた。
「やっぱり1人では、怖くて帰って来れなかったのね…」
やはり一度きちんと話し合おうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます