第25話

 午後からの訓練は、走っても意味が無さそうというか、体力が続かないという悲しい理由で、怪我で休んでいた兵士の人に座学をして貰った。


 というか聞きたい事が沢山あったのだ。



 彼の名はカインさん。


 またしてもイケメン。


 高過ぎる顔面偏差値。



 彼は何を聞かれているのか不思議そうな顔をしたり、呆れた顔をしながらも真面目に答えてくれた。


 カインさんに聞いた事を僕なりに要約すると、ゲームのようにHPなんてものはなく、体力は高くても首を飛ばされれば即死する(当然だ)。


 MPなんて表記はなく、

 精神的に疲弊してしまうと魔法は発動しない。


 体力=スタミナ(たぶん)


 魔力=回数や持続時間に関係(たぶん)


 一般的な兵士さんたちでレベルは平均で15〜25くらいあって、能力は軒並み200前後とのこと。


 隊長クラスになるとレベル50超えとかで、能力は分からないそう。


 兵士でない一般の10代後半なら、レベルは5〜8くらいで、ステータスは50〜80くらいだそうだ。


 これだけ聞くとレベル毎の上昇値は10くらいに感じる。


 素直に考えれば隊長はステータス500前後と思っていて遠からずだろう。


 後は僕の場合は勇者補正に期待か…。



 カインさんに聞きたい事は全部聞けたかな。


 そう思って彼にお礼を言おうとした時、兵舎に横手が飛び込んで来る。


「理斗さん、理斗さん、優子さんと遥さんが!」


「2人に何があった?」


「すぐに来て下さいっ!」


 横手を追いかけて兵舎から飛び出る。


 どうやら方角的には兵舎からグランドを挟んで、対角線上の反対側にある弓の練習場へ向かったらしい。


 情けないが速過ぎて追いつけない。


 帰宅部男子は420メートルをダッシュ出来るようには作られていないのだ。



 必死に追いかける。


 全力を尽くして走り、やっとの思いで辿り着くとそこには、


 困惑した顔の兵士さん達と横手、そして何て事ない顔をした普段通りの2人がいた?


 僕の2分程のダッシュは何だったのか?


 中学生でも1分ちょっとで走れるそうじゃないか?


 だから何だよ?




 自問自答をしながらも歩みより、事の発端である横手に問いかける、


「いったい何だったの?」


「さっきまで2人とも青い顔して震えてて。優子さんなんて、恵ちゃん恵ちゃんて泣いちゃって大変だったんです。それがほんとに1分くらい前に急に人が変わったみたいに落ち着いちゃって、2人とも大丈夫なんですか?」


 1番の懸念事項がここで起こってしまったか?


 それにしても立ち直り方が不自然過ぎる。


 僕は2人に話しかける、


「大丈夫?何か不安に思う事でもあった?昨日からバタバタしてるしスケジュールも見直して貰った方が良いかも知れないね。僕の方から言っておこうか?」


 長岡が言う。


「大丈夫、理斗がいるから平気。」


 水沢も言う。


「そうね、香川もいるんだしね。」


 会話になっていない。


 不安にも突如として安定した事にも、根拠は無いという事だろうか?


 困ったな。


 詳しく聞こうにも、まだ今は再発の可能性が捨て切れない。


 あまり掘り返し過ぎるのは負担をかけ過ぎて良くないだろう。



 ここに来て顔を合わせていない深川と八戸は大丈夫だろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る