第24話
初日の訓練が開始された。
最初は軽く準備運動、そして軽くランニングしてから、それぞれの訓練へ。
深川は剣を習いにカティアさんの元へ。
八戸は白魔法の勉強に神官のキーファさんという人の元へ。
水沢は槍を、長岡は弓を習いに副騎士団長エルトさんの元へ。
横手は黒魔法を習得するためユリスさんの元へ。
僕は走っていた。
それはもう走っていた。
否、走らされていた。
僕の耐荷重値では木刀はおろか、弓矢の矢ですら装備できなかったのだ。
おかしい。
地球で、京都の土産物売場で木刀を持った事があるのに。
そしてスキルに魔法もない。
走る以外にやる事がないとも言う。
これでは僕の庇護とかいうスキルの確認の仕様もない。
異世界は僕に遠距離ランナーにでもなれというのだろうか?
まさか午後からもランニングじゃないだろうな?
日陰で空を仰ぎながら横になる…。
サボっている訳ではない。
もう動けないのだ。
慣れない靴で30分は走ったのではなかろうか?
可哀想な者を見るような目を向けないで欲しい。
僕は他の女子達のようにステータスに恵まれてはいないのだ。
さて、身体は休めても思考は休められない。
一般の兵士さん達のステータスって平均でどのくらいあるのだろう?
1レベルでの上昇値なんかも分かれば色々と計算し易いんだけどな。
召喚された勇者は上がり幅が大きいのだろうか?
そして今やっている訓練なんかでも数値は上がるのだろうか?
これも聞いておかなければならない項目入りか。
装備品の重さは追々と。
でもステータスって、ある意味では物凄く残酷な物だと思う。
数字こそが絶対。
男の僕が、同い年の女子に力で敵わないと明確に表示・表記されてしまっている世界。
これで訓練で数値は伸びず、上昇値の幅が固定されていれば目も当てられない。
初期値が違い過ぎるのだ。
そうなった時、いったい僕は何がなせるのか…。
気付けば結構な時間を休んでいたようで、こちらに向かって横手が歩いて来ている。
「理斗さん、理斗さん、大丈夫ですか?走り過ぎて動けなくなっちゃったって聞きましたよ?」
「何とかね、だいぶ休ませて貰ったし平気だよ。」
「お昼ご飯らしいので一緒に行きましょう。あそこの建物で食べれるそうですよ?」
やはり兵舎で昼食らしい。
迎えに来てくれた横手と歩きながら訓練について質問する。
「魔法の勉強は難しかった?何か使えるようになったの?」
「まだ座学だけですね。魔力?が強いし多過ぎるらしくて危ないそうなので、先に勉強しないと駄目みたいです。」
贅沢な悩みだが道理である。
もらい事故はゴメンだぞ。
「綾子さんは軽い回復魔法?は使えてるみたいですよ?凄いですね。理斗さん、理斗さん、私も早く使ってみたいです。」
「さすが八戸さんは勉強家だね。医学に通じるところがあるのかね。」
僕はまともな訓練がしたいね。
などと話していると兵舎に到着。
ドアを開け中に入ると100名くらい入れそうな大きな食堂だった。
既に大勢の兵士達が食事を摂っている。
僕達も他の兵士達の様に食事を貰いに並ぶ。
本日のメニューはパンとスープとサラダと肉。
この世界の料理は、はっきり言って美味い。
過去の勇者が改善済みなのか、文句の付けようもない。
ある程度の料理は出来る僕だが知識無双もさせて貰えない。
マヨネーズで一獲千金?
誰だ?そんな事を広めた奴は。
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