第23話

 テラスのテーブルに料理がならび、王族との朝食が始まる。


 楽し気な表情を浮かべたまま、僕の嘘も強固に塗り固められて行く。


「あら、答えてくれないのかしら?」


 暖かな日差しを受けたテラスの温度が少し下がった気がする。


 王様の方を見ると青ざめた様子で目を逸らされた。


「いえ、本人を目の前にして答えるのは些か恥ずかしいというか照れがありまして。」


 答えると同時に温度が元に戻る。


 王様の顔色も戻る。


「そうですか、2人とも凄く喜んでおりましたので嘘だったり誤魔化されたりしたらどうしようかと思っておりましたの。」


 先程よりも更に温度が下がった気がする。


 青ざめる王様、目が笑っていない王妃様、照れ笑いの王女姉妹、良い笑顔のロザリーさん?


 良い性格してますねぇ?


「そんなはずありません。誤魔化すだなんて。

 ただ我々の国では大切な事は余り何度も口にしないのが一般的ではありますね。何度も口にする方が言葉は軽くなってしまう。誤魔化すように聞こえる。大切な時、大切な事を相手に伝える事によって誠意が伝わるとされているのです。」


 今度は最初よりも温度が上がった気がする。


 あからさまにホッとしている王様。


 満面の笑みを浮かべる王妃様。


 恥ずかしそうに悶えている王女姉妹。


 何故か面白くなさそうなロザリーさん。


 アピールするねぇ。


 結局、朝食は王妃様としか会話しなかった。



 ロザリーさんと自室に向かいながら会話する。


 移動中の会話は初めてである。


「明日も楽しみにしております。」


 もう隠す気もないようで。



 部屋に戻った僕は、ロザリーさんから訓練用の服に着替えるよう言われる。


 前もってクローゼットに準備されているようだ。


 サイズが合わなかったら訓練場で替えてくれるとの事。


 袖を通してみたが交換の必要はなさそうだ。


 靴は革製なのだが、これで訓練するには硬すぎやしないか?




 ドナドナの気分で城に隣接する訓練場へ連れられて来た。


 300×300メートルくらいの運動場くらいの広さで、入って右側の隅にある建物は兵舎だろうか?


 弓道場の様な的も見える。


 訓練場の入り口でロザリーさんに言われる、


「帰りは1人で帰っておいで?」


 彼女の中で僕の立ち位置は、どのくらい低くなっているのだろう?



 訓練場では既に走っている兵士、模擬戦だろうか?戦闘をしている者もいる。


 僕は女子達を見付け、そちらへ駆け寄る。


「開始ギリギリじゃない?初日から何をやっているの?明日からは早めに来るようにしなさい。」


 深川から小言を頂戴した。


「ごめんね。時計がなくて、時間が分からなかったんだ。」


「そうなの?私の担当のメイドさんは毎朝7時に起こしに来てくれるそうよ。他の皆も同じみたいだけど…。」



 ロザリーさん?


 やはり、一度きちんと話し合う必要があるみたいだ。



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