第21話
横手と長岡は遠くで何かを食べながら談笑している。
深川はカティアさんと話をしているようだ。
八戸は宰相と騎士の方々と。
僕の目の前には、水沢と王女姉妹が並んでいる。
どうしてこうなった?
セレス様は嬉しそうに問う。
「あ、あの、メ、メロメロなんですか?」
僕は、はっきりと答える。
「いえ、違います。」
彼女は寂しそうに呟く。
「……違うんですね。」
僕は言う。
「いえ、メロメロな気もします。」
彼女は不安げに聞き返す、
「き、気がするだけかも知れないのですね。」
今にも泣きそうな彼女に返す、
「いえ、メロメロです。」
「メ、メロメロなんですね。」
「はい、それはもうメロメロです。」
セレス様は花が咲いたような笑みを浮かべる。
水沢も納得する。
「やっぱりね。そうだと思った。」
何を根拠に、そう思った?
今の会話を聞いていなかったのか?
そして今度はユーリ様が自信に満ちた表情で僕に問う、
「私にもメロメロなんですね。」
僕は首を傾げる、
「何故?」
そして彼女も少し首を傾げる、
「えっ?何故?メロメロなのよね?」
彼女に至っては特に誤魔化す必要すら無いのだが。
「メロメロなんでしょう?」
自信が揺らいだのか不安気になって来たようだ。
「えっ?そんな要素なかったでしょう?」
僕の方はというと、少し楽しくなって来ていた。
「メロメロよね?」
「えっ?違いますけど?」
ユーリ様の目尻に涙が浮かんで来ている気がする。
「メロメロ?」
「………。」
無言で首を横に振る。
「…メロメロ?」
「……。」
ふるふる。
「……めろめろ…。」
「メロメロ。」
うんうん。
気付けば僕は、首を縦に振りながらユーリ様の頭を撫でていた。
異世界人はメロメロでなければ幼児退行するのだろうか?
そして一体、学友の前で何の会話を強要されているのだろうか?
明日からも顔を合わすと言うのに。
異世界よ、謀ったな異世界よ。
あの後、王女姉妹から解放され歓迎会はお開きとなった。
僕はロザリーさんに連れられ自室に戻り、入浴を済ませた後だ。
やたらと濃密な1日だった気がする。
王様が手配してくれると言っていたのは、いつになるのだろうか?
今のうちに考察すべき内容を書き記しておく。
・僕と女子達のステータスの違い
・地球や家族の事を考えない違和感
・言語関係の補正について
・帰還について
・厄災までの期間
・過去の厄災の難易度と犠牲者
・過去の勇者のステータス
・過去の勇者と僕達に何か違いがあるのか?
今は、こんなところか。
この世界の人達に僕の文字は読めないと言ってたな。
女子達には読めるのだろうが、やはり考察内容自体は、ある程度まとまるまでは見られない方が良いのだろうか。
不確定要素が多過ぎる。
僕は学生鞄にノートを入れ直し、ベッドに横になった。
疲れていたのか長くは起きていられなかった。
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