第20話
「そうですか。レベルが上がって新しく覚えたりとかは?」
「数多く事例があるようですので、悲観される事はないと思いますよ。」
ユリスさんは笑顔で答えてくれる。
この人、ええ人やぁ。
「では、魔法のスキルが覚えられた時は宜しくお願いします。」
「ええ、是非とも。」
これで一通りの挨拶は終わりだろうかと女子達の元に戻る。
「本当に昼間は挨拶出来てなかったのね?」
呆れたように深川が言う。
「そうだね、6回も勇者迎えてて王様達も疲れてたんじゃないかな?僕のステータスもイレギュラーだったし。」
申し訳無さそうに返事しておく。
「深川さんも今日は最初に召喚されて、長時間待たされて疲れたんじゃない?」
「いいえ、中々に有意義だったわよ。すぐに八戸さんも来たし、色々と検証出来たしね。」
会長様は退屈はしなかったようだ。
「何か分かったの?」
「詳しくは後で共有するつもりだし、疑問に思った事は順次試して行くつもりだけどね。とりあえず分かっているのは、
私達がこの世界の文字を読むことは出来るけど、この世界の人達は私達の世界の文字を読む事は出来ないようね。
会話は出来ているし意味は伝わっているのだけれど、発音が違うのか口の動きが違うのよ。私達の耳には翻訳されて聞こえているような感じかしら?」
なるほど、言語の補助もされているのか。
スキルに異世界語翻訳や習得と表記されていなかった事を考えれば、
転移時に身体を弄られたと考えた方が良さそうか?
過去の勇者との比較項目が増えたな…。
しかし、
「さすが、深川さんだね。」
心からの称賛である。
「あら、いつもより褒められている感じがするわね。」
異世界に来て感性も鋭くなっておられるのだろうか?
まるで普段から適当に褒めていたのがバレているかのようだ。
話を逸らす、
「そういえば、やっとカティアさんが誰の事かは分かったよ。凄いね、女性で騎士団長なんて。」
「そうでしょう。あの地位に登り詰めるまで、どれほどの努力を積んだのか。尊敬に値するわ。」
危険を回避できた模様。
そこに八戸が声をかけて来る、
「じゃあ私達が話してたセレスさんも誰か分かったのかな?」
「あぁ、妹の方のお姫様…」
そうだった、悲観するな詐欺の相手である。
僕が異世界で最初に戦うべき相手、倒すべき相手でもある。
だか、まだ戦闘手段も与えられておらず、倒せば生活手段も信用も失う事となる。
詰んでいる。
「香川は年下に甘いから、セレスさんにメロメロなんじゃない?」
水沢の声に身体を固くする。
「ナンノコトカナ?」
「だってあんた、いつも恵にも甘々じゃない。」
今度は言葉を失う。
記憶が操作されている訳ではないようだ。
意図して忘れている訳ではないのなら、どうして最愛の妹が心配にならない?
「香川?」
不思議そうな顔で水沢がこちらを見ている。
何とか誤魔化しさなければ…。
「そうだね。もうメロメロだね。」
「えっ?」
「えっ?」
「「「えっ?」」」
なんで水沢は王女姉妹の目の前で、メロメロかどうか聞いたのだろうか?
そして僕も何故、気付かなかったとはいえ、本人の前でメロメロだと答えたのだろうか?
異世界よ、悪意に塗れた異世界よ。
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