第19話

 この親子の笑いのツボは同じなのだろうか?


 ずっと笑いっ放しなのだけれど。


「妻のパオラだ。それに長女のユーリと次女のセレスだ。笑い終えるのを待っていたら、いつになるか分からん。」


 あらあら王様ったら、男のらしくてステキ。


 時間は有限なのだし、王族より先に挨拶するは失礼に当たるのか、宰相閣下や騎士様が挨拶しに来て待ってくれているのだ。


 素晴らしい判断をされる。


 と思っていたら王女姉妹は笑うのをやめ、王様を睨んでいる。


 反抗期だろうか?


 王妃様は冷たい眼でニコニコしておられる。


 王様は青ざめていた。





 他の人に挨拶に向かう前に、念のため僕は未だ青ざめて凍える王様に近付いて小声でお願いしておく、


「王様、出会ったばかりの僕に信用はないかも知れませんが、勇者達の精神面に違和感を感じるのです。詳しい方がいれば相談させていただきたいのですが。出来れば口が固く、過去の勇者にも詳しい方が良いのですが。」


「………それは、俺に話しても良いものなのか?」


「はい、それは勿論。現在の僕にとって、この世界で1番信用出来る相手が王様だと思いますので。元の世界での彼女達を知っている僕だからこそ気付ける違和感だと思うのですが、直接彼女達に伝えてしまうのは余りにも危険な気がしまして。」


「………分かった。後から話が通るように取り計らう。」


「どうか、お願い致します。」


 これで諸々に片付けば良いが、どうなる事か。



 僕は未だ王様を睨む王女姉妹から逃げるように宰相の元へ向かった。


「この国の宰相を務めております、クロム・ラダトクスと申します。」


「どうも。こちらこそ、宜しくお願いします。」


 昼間、ジャパニーズサラリーマンの謝罪攻撃に耐え切った猛者だ。


「昼間はお騒がせしました。申し訳ありません。」


「いやいや、男が簡単に頭を下げるものではありませんぞ。」


 やだ、格好いい。


 この世界の大人の男性はイケメンばかりである。



「近衛騎士団長のカティアです。明日からの訓練で顔を合わせる事になるかと思います。」


「あなたがカティアさんでしたか。明日から宜しくお願いします。」


「私の事を知っていらっしゃったので?」


「はい、お名前だけですが。昼間は皆様のお名前をご紹介いただくタイミングを逃してしまったので、誰の事かは分かっていなかったのですが、深川がカティアさんに憧れると話していたので。」


「あら、本当ですか?」


「はい、おそらく同じ女性として近衛騎士団長という責任ある立場に就いて居られる事に対して憧れたのでしょうね。」


「そう、嬉しいものね。明日から頑張ろうかしら?」


 とても上機嫌である。


 どうか僕の訓練だけはお手柔らかに頼みたい。



 次に現れたのローブの女性。


 髪も赤ければ眼も赤い、ファンタジー代表格の魔導士様か。


 文献を精査したのというのは彼女だろうか?


「宮廷魔導士のユリスと申します。勇者様方に魔法をお教えする事になります。宜しくお願いします。」


「こちらこそ宜しくお願いします。ところで僕にも魔法は使えるようになるのでしょうか?」


「はい、スキルに〇〇魔法と出れば使えるようになります。」



 僕に対して厳し過ぎやしないだろうか、異世界よ。

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