第18話
歓迎会は続き、女子達は王族や近衛騎士の方々、宰相などお偉い方々と話に花を咲かせている。
僕はというと、邪魔にならぬよう壁の花となっていた。
花といっても男であるが。
壁の花は女性に対する表現だったか?
男の場合は何と表現するのだろうか?
特に誰も話かけて来ないしお腹も膨れたので会場を見渡す。
遠くで美しいロゼさんとロザリーさんの姿は見かけられるが、わざわざ話しかけに行く程の話題もない。
そしてカルロスも戦友も会場には来ていない。
僕の交友関係の何と狭い事か。
女子達は部屋にいる全員と面識があるのだろうか?
いつの間に?
僕が男だからか?
異世界に来てまで男女差別か?
そりゃ男と話すより女性のが良いよね、気持ちはわかるよ。
それでも拾える情報は少しでも持って帰らねばなるまいと、聞き耳を立てておく事は忘れない。
今一番欲しい情報は過去の勇者の文献とやら。
次点でそれを詳細に調べたという存在。
やはり数件のデータが欲しい。
過去の勇者が元の世界に帰ったのか?
郷愁の念を抱いていなかったのか?
召喚されてから厄災が起こるまでの期間は?
「…………。」
後は統計的な難易度と犠牲になった数くらいか。
「………様。」
念には念を入れて調べておきたい。
「……ワ様。」
僕らの為にも異世界のためにも。
「…ガワ様。」
「えっ?」
「カガワ様。」
目の前に王女姉妹様?
何が起こった?
「はい、何かございましたでしょうか?」
「少しお時間をいただけますでしょうか?」
警戒すべきだろうか?
だが、歓迎会で処刑されるというのも考えにくいか。
「はい、構いませんよ。」
「では、こちらへどうぞ。」
王女姉妹に壇上へと連れて行かれる。
なんという事でしょう。
まだ王様がいらっしゃるではありませんか。
王様は謁見の間にしか存在できないというのは都市伝説だったのだろうか?
まだ居座っておられる。
「わざわざ、すまないな。」
いやん、近付くと更に男前な王様でいらっしゃる。
「顔合わせの時、きちんと挨拶が出来なかったので時間を取らせて貰った。シリウス・アークランデだ。」
「香川理斗と申します。その節は大変失礼致しました。」
突如、王妃様と王女姉妹が笑いを堪え始める。
「……ちなみにあの時は何故あのような対応を?」
「…いや、何と言いますか、1回で召喚して6人全員まとめて来いよって思いません?」
「………正直、思うな。」
「ですよね。僕なら一度で済む事を二度手間どころか六度手間なんて耐えられないので、そろそろ皆様お怒りではなかろうかと予想してまして。怒られる前に謝ってしまおうと。」
「なるほどな…。」
話の分かる王様だった。
この様子なら、
素直に僕の悩みを話してみても良いかも知れない。
過去の勇者の文献も見せてくれるんじゃなかろうか?
他の子にも言えるが、特に水沢は突然郷愁の念というか恵ちゃんの事を思い出せば、精神的に危険が伴う。
出来れば早いうちに憂慮は払っておきたい。
だが、今は王妃様達が涙を流し肩を震わせて笑っていて真面目な話は出来そうもない。
とりあえず、少し待つしかないようだ。
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