第17話

 女子達に笑顔を返しながら考察する。



 元の世界の事を考えられる僕と彼女達の明確な違いは何だ?


 呼ばれた順番?


 呼ばれてから過ごした時間?


 地球にはなかった魔力だろうか?


 ステータスで言えば耐荷重も地球では数値化されていないか。


 何が作用している?


 転移時に何かされたのか?


 ステータスを得た事というならば僕も含まれる。


 疑わしいのは彼女達の高ステータスも1つか。


 僕はステータスが低いからこそ、影響が少ないと思えば納得が行く。


 レベルやステータスを上げた後、僕も彼女らと同様に元の世界の事を気にかけなくなるというのなら、レベルを上げる前に今の疑念を文章にでも残しておくのが無難だろうか?


 それとも精神耐性のスキルか?


 耐性というからには、不安の解消くらいには役立ってそうな気はするが、忘却させるものではないだろうし…。


 過去の勇者たちの前例も聞いてみたいが、こうなってしまえば異世界の人達も疑わしく感じられる。


 素直に相談して、間違った情報を掴まされては意味がない。


 かと言って軽々しく女子達に相談して、動揺させるのも良い選択とは言えない。


 上手くない。


 むしろ、危険過ぎると言っても過言ではない。


「理斗、何か難しい顔してる。」


 こちらに気付いた長岡が話かけて来た。


 顔に出ていたのだろうか?


「そうかな?明日から訓練があると聞くと憂鬱な気分になってね。」


「そう。私は弓術が楽しみ。中学の時以来。」


「経験者だったんだ。」


「ん。優子は薙刀で智美は剣道部。」


 元々の素質がスキルや職業に反映された感じか…。


 八戸は医療関係に強かったから聖女。


 横手が猫専用のティマーでないのは何故だ?


 勉強出来ない賢者とは如何なる者か?



 そういえば昔のゲームで、殆どの魔法を忘れてしまった状態で仲間になる賢者様が居たな。


 10の12乗、すなわち1兆を示す名を与えられた伝説の賢者様のMPはレベルが上がっても最大値は90で固定されている。


 同レベル帯の召喚士幼女にもMPは劣っている。


 しかもレベルが上がるとMPは増えないのに、体力と力と速さが低下していく仕様。


 そう、彼の名はテラ。


 彼こそが伝説の大賢者様。



 思考がブレ始めた頃、王族達が入室して来た。


 各々が食事や会話をやめ羨望の眼差しで見やる。


 近衛騎士が先導し王様・王妃・王女姉妹と他の騎士と共に入って来られる。


 おやおや、こちらと目がお合いになった王様が苦笑いしておられる。


 何かあったのだろうか?


 王妃様や王女姉妹様は御機嫌なようで。



 王族が壇上に移動すると会場に静寂が訪れる。


 グラスを持った王様が声高らかに、


「本日、異世界よりこの地に6人の勇者たちがやって来た。これから起こる世界の危機を救う為だ。彼等と協力して事にあたり、必ずや共に乗り越えよう。護るべき大切な者のために!」


「乾杯っ!」


『乾杯つ!』


 うん、格好良いね。


 とても謁見で寝そうになっていた人と同一人物とは思えない。


 そういえば、まだ僕は王様のお名前すら知らない。


 と、思っていたら今度は深川が挨拶するようだ。


「深川と申します。召喚された勇者の代表として挨拶させていただきます。明日からの本格的に訓練を受け先達からの指示を仰ぎ、力を身に付け必ず世界を平和に導きます。まだまだ未熟ゆえ至らぬ点はあるかと存じますがご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い致します。」


 さすが我等の生徒会長。


 拍手喝采である。


 拍手していなかったとバレた時が怖いので、僕も必死に拍手した。

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