第16話

 僕の脳内で地球と異世界の美容戦争が勃発しかかっているとロザリーさんから声がかかる、


「明日からのスケジュールについて、ご説明させて

頂いても宜しいでしょうか?」


「はい、お願いします。」


「まず8時から朝食を取っていただきますので、それまでに起床し準備して下さい。

 10時から訓練が始まりますので、城外にある騎士団の訓練場に移動していただく形となります。

 昼食も同じく訓練場です。

 午後からも訓練かと思われますが、夕食は城内で18時からなら食べる事が出来ます。

 あまりにも遅くなってしまうと、何も残ってない可能性もありますのでご注意下さい。

 入浴は17時から21時までに済ませて下さい。

 それ以外の時間ですと井戸水で身体を拭いて済ます事になります。

 何がご質問はございますか?」


 担当なのに起こしてくれないんですね。


 とか、


 何やら扱いが雑ですね。


 とか、


 言いたい事は色々あるけど大体は理解した。


「いえ、今のところは特にありません。また気になる事があれば、その時に質問させて下さい。」


 少し目を見開いて驚かれている。


 知力:60のくせに言葉を理解出来たのか?


 とか、


 本当に大丈夫なのか?


 とか、


 面倒くさいから今聞けよ。


 とか、


 思われているのだろうか?


 生憎、貶されて喜ぶ特殊な趣味は持っていない。


「分かりました。では歓迎会の会場にご案内いたします。」


 一応は、納得してくれたらしい。



 ロザリーさんと共に中央の塔2階の広間に向かう。


 やはり会話はない。


 歓迎されていない者が、何の為に歓迎会に向かうのか?


 不参加という選択肢はないのだろうか?


 うだうだと考えている内に到着し、ロザリーさんが断りもなく扉を開けてしまう。


 いけずやわ、この人。




 女子達は既に到着していて、相変わらずの笑顔で迎えてくれる。


 僕にそんな価値はないのだけれど。


「理斗さん、理斗さん、凄いです。豪華です。」


 横手がはしゃいでいる。


 他の皆も楽しげに話している。



 ふと思う。


 不安や違和感を抱えているのは僕だけなのだろうか?


 まだ皆は戦闘を経験してないから、怪我や病気や死を意識しないのだろうか?


 ステータスが恵まれているから?


 地球にいる友達や家族の事は?


 最低でも数週間から数ヶ月、下手すれば数年は帰れないというのに。


 ………ん?


 帰れない?


 そもそも帰れるのか?


 帰るための条件は?


 その手段は?


 僕だけ聞いていないのか?


 何故、元の世界に帰る事自体を忘れていた?


 帰らないという選択肢も取れるのだろうか?


 それとも全員揃っての強制送還?


 分からない事だらけだ。



 家族といえば、まだ今日は横手から猫の話を聞いていない。


 特に水沢は、その様子に違和感がある。


 恵ちゃんの事が気にならないはずがないのに。


 おそらくクラスの誰かが今日も面倒を見てくれているだろう。


 それでも15時から夕食くらいまで。


 広い家で12歳の妹が1人きりで夜を過ごしているなんて考えたら、きっと平気ではいられないはずだ。


 あんなにも大切にしていたのだから。



 異世界よ、いったい僕達に何をした?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る