第12話

「これは…」


 困惑しておいでの皆様に恐る恐る声をかける。


「一般的なステータスというのは、どの程度のものなのでしょうか?皆様が困惑されているように見えるのは僕のものが低過ぎるからなのでしょうか?」


 代表して妹姫様が答えてくれる、


「いえ、今まで戦闘訓練されていなかった事とレベル1という事を考えれば、それほど低過ぎるという訳ではないのですが…。」


 であれば困惑の原因は?


「スキルが問題なのでしょうか?」


 素直に問うてみる。


「それもあります。ただ隠蔽は少なからず持っているものは存在するのですが、取得条件が特殊なものですから。」


 不信感を抱かれているのだろうか?


「取得経験値10倍というのは、とても素晴らしいものだと思います。」


 こちらは褒められているようで良かった。


「ですが、庇護者という職業と庇護というスキルを我々も見たことも聞いたこともないのです。」


 状況が変わって来た。


「過去にも召喚されて来た勇者の中に同じスキルや職業はいなかったのでしょうか?」


「はい、深川様の召喚が確認された時点で過去の文献などを詳細に調べましたので、恐らくは…。」


 未確認危険人物認定である。


「後は…」


 まだ追い討ちがあるのだろうか?


「耐荷重という項目が確認できると思います。」


 確かにある。


 15である。


「申し上げ難いのですが、その項目は装備できる物の重さの合計値でして…。」


「ちなみに15だと何が装備できそうですか?」


「衣服や靴はカウントされませんので、指輪です。」


「えっ?」


「指輪です。」


「えっ?」


「‥‥‥。」


 聴き間違えではないようだ。




 異世界は指輪を装備した僕に何を庇護させようというのか?


 嫁か?


 異世界の妹か?




「とにかく今はレベル1です。そちらもレベルの上昇と共に改善されて行くはずですので今から悲観される必要はないかと。」


 自ら落としておいてフォローしてくれる妹姫様。


「そ、そうですね。スキルの確認をしながらレベルを上げをして何とか厄災とやらが起こるまでに間に合わせられるよう努めたいと思います。」


 不安しかないが無難な受け答えを返しておく。


 これ以上ここで使えない認定され機嫌を損ねては本当に追い出されかねない。


「この後は皆様の宿舎へのご案内と歓迎会を予定しております。迎えの者が参りますので、先程の部屋に戻って待っていて頂けませんか?」


「分かりました。失礼します。」


 僕は謁見の間を後にした。



 部屋を出ると戦友が待っていた。


 彼と共に登って来た階段を降る。


 やはり会話はない。


 3階に着くと笑顔で迎えられる。


 その笑顔に先ほどのステータスへの期待が見え隠れして少し痛い。


 今度は水沢が話しかけて来た。


「どうだった?セレスさん可愛かったでしょ?」


 誰の事だろうか?


 今更ながらに気付く、


 僕は異世界に来てからカルロス以外の名前を覚えていないという事に。


 何故、誰も僕に対して名乗ってはくれないのか?

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