第11話
さて、僕が異世界に召喚された目的は果たしたと清々しい気分で達成感に浸っていると声がかかる。
「これよりカガワ様には、来るべき厄災への対応の為に力を付けて頂く事になります。」
……そうだった。
僕は眠くなっている人を見付けに異世界まで来たのではなかったのだ。
一体いつからウォ○リーかダウトを探せが始まっていると勘違いしていた?
異世界よ、僕を騙したな?
このまま彼らに恥を欠かせたままでは、訓練や城での生活で陰湿なイジメを受け、王様から冷遇されて最終的には追い出されていくのだ。
なんと浅はかな事を。
「まず適正などの確認の為にステータスを確認させて頂きますので、こちらの水晶に触れて頂いて宜しいですかな?」
「すいません、僕の勘違いでした。」
謝るなら早い方が良いだろう。
「えっ?」
「ええ、やはり僕の見間違いか何かでしょう。」
こちらとて将来はジャパニーズサラリーマン、謝るという行為に躊躇はない。
「は?」
「本当に申し訳ございません。」
戸惑っているのは宰相さんだ。
だが、ここで引くわけにはいかない。
「いえ、あの鑑定をですね…」
「いえ、すいませんでした。」
やはり誠意が大事なのだろう。
そろそろもう一方の膝も床に着け土下座スタイルへ移行しようかというところで、王妃様・王女姉妹が肩を震わせているのに気付く。
マズい、お怒りがピークに達しておられるようだ。
このままだと追放前に処刑されてしまう。
不安を感じていると、くぐもった笑い声と共に姉らしき王女から声がかかる。
「…ぷぷっ。…もうやめてっ。もういいから、大丈夫だから。」
本当だろうか?
もういいとか大丈夫とか、どちらとも取れる言葉は不安要素しかない。
やはり、ここは土下座よりも五体投地を披露すべきかと思案していると妹っぽい王女が、
「本当に大丈夫ですよ。信じて頂けませんか?」
と僕に問う。
「いえ、信じましょう。」
僕は即答した。
妹だからではない。
決して。
御姉妹と王妃様以外はお疲れのご様子なのは何故だろう?
さて、いよいよステータス鑑定である。
水晶に触れる事によって、レベル・職業・スキルなどが表示されるらしい。
よくゲームなどで見かける透明の板方式で、いつでも観られるタイプではないのだろうか?
であればカルロスの前でステータスオープンと叫ばなかった僕を褒めてやりたい。
やっぱり印象って大事だからね。
とか考えながら水晶に触れる。
空中に文字が浮かび上がる。
プライバシーという概念はないのだろうか?
スリーサイズとか出て来たら、長岡辺り暴れてそうだけど。
状態異常・深刻な痔とか便秘3日目とか出たら表を歩けないぞ。
カガワ リト 18歳
種族: 人間
職業: 庇護者
レベル: 1
体力: 60
魔力: 60
筋力: 60
敏捷: 60
知力: 60
器用: 60
魅力: 60
運: 60
耐荷重: 15
スキル: 隠蔽・取得経験値10倍・庇護
比較対象がない為に喜んで良いのか悲しむべきかは、まだ分からない。
ただギャラリーを驚かせる事には成功したようだ。
今晩は、ここに泊めて頂けるのでしょうか?
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