第8話

 顔合わせの為に部屋に入る。


 共に階段と戦った彼は入り口で待機している。


 会議室の様な部屋だろうか?


 無駄に開く中には大きなテーブルがあり、先に召喚された5人の女生徒達が椅子に座ってお茶を飲んでいた。


 全員がこちらに気付き、それぞれが笑顔を向けてくれる。


 勘違いでなければ歓迎されているようだ。



 左側手前に座っている気の強そうな顔立ちの美人さんは黒髪で長髪、彼女は深川智美という。


 文武両道・容姿端麗を体現する我が高校の生徒会長だ。


 彼女は出会って間もない頃、僕の事を目の敵にしていた。


 ご自身よりも他の生徒から相談され頼りにされているという存在が、お気に召さなかったらしい。


 彼女との和解は実に簡単だった。


 適度に解決し難い悩み事を捏造し、彼女に助けて欲しいと相談を持ち掛けただけだ。


 解決後に少し情けない笑顔で流石は深川さんだと伝える。


 多くの生徒に相談を持ち掛けられる僕から頼られる、それだけで彼女の自尊心は満たせられる。


 捏造しているのはバレたりない。


 相談自体は匿名だし、僕には守秘義務があると最もらしい理由を告げている。


 それ以降、毎日のように手に余る相談事はないかと聞きに来る始末である。


 丁度いい塩梅の悩みを考える方の身にもなって欲しい。



 深川の左隣に座っているのは、八戸綾子。


 ふわりとしたダークブラウンの長い髪に優しげな目元、胸元の包容力が凄まじい。


 実家は大きな病院で彼女自身も大層な勉強家だ。


 将来は医者になり多くの人を救いたいそうだ。


 彼女が僕の元に訪れるのは、どうやら誰かを助けたいという、高尚な精神を持った人間だと勘違いしているのだと思われる。


 打算的な僕は決して貴女と同種の人間ではない。


 八戸への対応はネットで調べたボランティアのチラシを印刷して見せるだけで十分だ。


 短時間で、身体に負担の少ないものならば尚良い。


 後は勝手に盛り上がる彼女に曖昧な笑顔で頷くだけで良い。


 そして月に2回くらい無償奉仕という苦行に笑顔で参加、時間を浪費し達成感という疲労を頂いて来るだけで、彼女との安寧は保たれる。



 八戸の左側が水沢優子。


 茶色い髪色のポニーテール。


 女子にしては背が高く、スタイルも宜しいようで何より。


 彼女の両親は僕の家と同じく放任主義。


 同じでないところを上げれば、互いに不倫相手との逢瀬が忙しく家に寄り付かない事。


 そして、学費とライフライン以外の金銭は殆ど用意されていないという事。


 彼女には恵ちゃんという12歳の妹がいるというのに。


 放任主義というより育児放棄である。


 彼女だけなら何とでもなったのだろう。


 だが小学生には収入も期待出来ないし、生活能力も求められない。


 児童相談所を進めてみたが、妹と離れて暮らすのは水沢が耐えられないと言う。


 親戚を頼るにしても近隣にはおらず、遠方に引越しや転校も嫌だと言う。


 一学生への相談の範疇を完全に超えている。


 困り果てた僕は、水沢の家を溜まり場にした。


 どうせ親は帰って来ないのだし、毎日3人くらいの女子が彼女の家で勉強したり、恵ちゃんの宿題を見たり夕食を用意したりして、水沢がバイトから帰宅したら解散するルーティン。


 学校や親に内緒の自由に出来る場所というのは皆大切なようで、今のところ上手く回っている。


 ただの現状維持と問題の先送り。



 女子ばかりのローテーションに僕が組み込まれているのは何故だろうか?

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