第7話

 RPGや小説の世界で主人公や勇者の一行が、


 謁見の間を訪れるシーンを見た事があるだろうか?



 厳かな雰囲気に包まれ、


 赤い絨毯に両脇に兵士や貴族、


 王の前に跪き、


 褒美を貰ったり、


 何かを報告したりするアレである。


 度々見る光景というより、


 高確率で王様と会うのは謁見の間である。


 他の場所での王様との遭遇率は稀な上に、


 時間にしても短い筈だ。


 謁見の間以外で王様は気付いたらいなくなってしまう。


 まるで、そこには存在できないかのように。



 ファンタジーというより、


 王様はメルヘンな存在かも知れない。



 キング・ケサランパサラン


 出会えれば、その年は幸せに暮らせます。



 というより王様は謁見の間に生えている可能性すらある。


 おそらく離れられても短時間、


 長時間そこから離れてしまうと次代の王様が生まれて来る的な?



 あかん、


 これ以上は召喚された勇者であっても侮辱罪・不敬罪で処刑されてしまう。





 しかし、移動手段が階段なのは如何なものか?


 いや、鉄棒を縦に登るのも嫌ですよ?


 降りる時は有りかもとは思う。



 現在の僕は王城内へと入り、


 4階に設けられた謁見の間へと向かうべく、


 苦行の様な階段との闘いの最中である。


 一旦、3階で先に着いた勇者と顔合わせがあるらしいが。


 気が重い。


 身体はもっと重い。


 外観は15階くらいありそうな百貨店規模の王城、


 なのに実際には5階か6階くらいらしい…。


 各階の天井の高さも日本基準の3倍近く、


 比例して階段の数は多く、


 そして長くなって行く。



 レトロRPGの主人公諸君らよ、


 階段のアイコンを踏むと、


「ザッザッザッ」という音と共に3秒で次の階、


 ズルくないか?


 それとも映らないだけ、描写されないだけで滝のように汗を流し、ぜいぜいと息を切らしながら謁見していたのだろうか?


 又は魔法的な力で疲れないし苦にならない仕様なのか。


 随分と滑らかに登ってたじゃあないか?


 僕が知らないだけで移動の魔法は圧倒的に簡単で序盤に手に入る物だったのだろうか?


 それとも彼らの訪れた城には、各階段下に転移係の魔法使いが待機していて、次の階に飛ばしてくれる親切さを発揮していたのだろうか?


 そんな贅沢で平和な国、もはや守る必要ないだろう。


 もし戦時中なら、何らかの報告の為に階段を登る無駄な時間で何人の兵士が亡くなるのだろう?


 襲撃された時の時間稼ぎの意味もあるのだろうけれど。


 階段を上がり続けながらも思考は沈み続けるという謎の状況の中、



 やっと3階である。




 まるで修行僧のような苦行に、ここまで一言も話さず離れずに随伴してくれた兵士さん。


 彼に妹はいないらしい。


 妹がいないから話しかけなかったわけではない。


 決してない。


 妹がいないから名前を覚えないわけではない。


 決してない。


 名乗って貰えなかったわけでもないのだけれど。


 どうやら我が強敵ともから何かを聞いて警戒され、彼とは心の距離が遠のいてしまったようだ。

 

 ブラザー、僕が何をした?


 カルロースッ?



 寡黙な彼は、辿り着いた先の扉を開けてくれる。


 そこには、やはり見知った5人の女生徒達がいた。

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