第5話
馬車でのアピールは続いた。
何故なら、もう既に城なんかに僕のヒロインが残っていない可能性の方が高いのだから。
でもカルロスさんから他の勇者の情報を聞いていくうちに、アピールタイムどころではなくなった。
「えっ、6人目?」
「はい、カガワリト様が6人目でございます。」
とても嫌な予感がした。
変な呼ばれ方も気にならないくらい嫌な予感。
やはりヒロインも残っていなければ無双も出来ない。
youは何しに異世界へ?
……もう少し詳しく聞くとしよう。
カルロスさんからの情報によると、
曰く、僕以外の5人は全員女性である。
曰く、全員が同じ服装をしていた。
曰く、僕の着ている高校の制服に似たデザインだった。
嫌な予感どころではなくなった。
そこまで聞いて、気付いてしまったのだから。
間違いなく、僕の知っている彼女達だろう。
何で今の今まで、この違和感に気付けなかったのだろう?
毎日のように相談を持ちかけに来る常連の5人が訪れなかった事に。
今日は心なしか件数が少ない程度にしか思わなかったのは何故だろう?
顔も名前も声も昨日話した内容だって覚えている。
クラスが同じ子だっている。
誰一人として会わない事の方が違和感があるはずなのに。
記憶障害?若年生アルツハイマー?
それとも何らかの超常的な力が働いたのだろうか?
どーんと来い?
なら僕が今、地球にいない事も違和感なく受け入れられているのだろうか?
彼方と連絡の取りようが無いのだから確かめようがないのだけれど、少しだけ気になった。
放任主義の両親は、僕が召喚されて消えようが、旅に出て少し留守にしようが、
どちらにしても気付く事はないとは思うけれど。
生きる為に仕事をしているのか、仕事をする為に生きているのか分からない人達だ。
世間では両親の事を社畜と呼ぶが、彼らは会社に飼われているのか?
それとも社会に買われていったのか?
社会だというのならば、学生という枠に組み込まれた僕も、また同じ社畜と呼ばれて相違無いのではなかろうか?
思考が逸れて来た…。
あぁ、僕は何度お義兄さんの前で固まるのだろうか?
もうきっと異世界無双も出来ないのだろう。
妹さん以外にヒロインも現れないだろうし。
彼女達の前で王女様をヒロイン扱い出来ない。
もう好き勝手に振舞う事も許されない。
地球で築き上げた僕という人格が、彼女達を裏切れないから。
こちらでの行動が、地球に帰った時の足枷になるから。
あぁ、ドナドナされている気分だ。
お義兄さん、もし宜しければ王城ではなく、このままご両親にご挨拶に向かわせていただけませんか?
異世界よ、せめて互いに知らない相手では駄目だったのだろうか?
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