第4話

 馬車に揺られながら、王城へ向かう。


 晴れている。


 昼下がりかどうかは分かるはずもない。


 なので、ドナドナではない。




 城までは大体で1時間ほどと言われたが、異世界基準で言われても正確な時間は分からない。


 そもそも言葉の意味合いが意図した通りに伝わっている保証もない。


 まぁ、遠目に街の入り口が見えてはいるので地球時間と大きく差はないのだろうと推測する。


 ちなみに御者は先程の兵士の彼。


 名前はカルロスさん。22歳のイケメンだ。


 元は平民で、二十歳で兵役に志願。


 戦闘で役に立てないからと左遷されて塔にいたらしい。


 家族には17歳の妹が1人いて、ご両親と暮らしているとの事。


 大切にしたい、この出会い。


 彼は将来的に僕の義兄さんになるのだろうか?



 異世界でファーストコンタクト、


 勇者である僕を送り届け、


 最終的に僕の義兄になり、


 名前はカルロス。


 異世界よ、彼に大役を与え過ぎではなかろうか?



 僕は付き合っている女性がいない事、

 僕が18歳である事をアピールしつつ、

 僕が呼び出されるに至った、

 この世界の危機について尋ねる。


「いえ、今のところ至って平和でありますよ。」


「えっ?」


「えっ?」


「んっ?」


「んっ?」


 僕は何の為に召喚されたのだろう?


 確かに呼ばれたと同時に死地に投げ込まれても大いに困惑どころか、ただ無駄死にか逃走の可能性が高かったろうけど。


 これから危機が訪れるから鍛えておけという、ご都合主義の親切設定だろうか?


 戦えない、抗えない者を呼び出しても意味がないという、ある意味での現実主義か?


「とっ、とにかく、これから勇者様には王城で私などより詳しい方々からの説明を受けて頂き、国王との謁見が行われる事になると思われます。」


 そろそろ、よく固まる奴とか思われていないだろうか?


 まだ見ぬ彼の妹に、変な奴だったと伝えられたらどうしようと心配になって来た。


 異世界よ、いつか全力で無双しますのでアピールタイムの延長をお願いします。


 と、思い始めたところに新たな爆弾が投下された。


「すでに他の勇者様たちは謁見まで済ませておいでかと思われます。」


 再度、僕は固まる事になった。


「えっ?」


「えっ?」


「んっ?」


「んっ?」


 よくよく思い出してみると、召喚された時に彼は「お待ちしておりました」と言っていた。


 それは僕が来るのを知っていた、もしくは来る可能性があったという事。


 なるほど、僕の異世界無双は始まる前から頓挫したという事か。


 異世界よ、僕のヒロインは他の勇者に取られた後じゃないだろうな?

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