第2話

教師達は連日に渡って僕の説得に来ていた。


どうしても理由が知りたかったようだ。


学校側からすれば成績も良く遅刻・欠席もない模範のような生徒が、3年の2学期に理由のなく自主退学ともなれば当然のように慌てるだろう。


イジメなどの不祥事はすぐにメディアに晒されてしまう世の中だ。


職員室は随分と荒れただろう。


申し訳ない事をしたとは思うけど、本当の事は話せなかったし話しても信じて貰えなかっただろう。



勿論、友人達もたくさん連絡をくれた。


やめないで欲しいと言ってくれた。


自惚れかも知れないけれど、こんな僕でも友達は多いんだと思う。


本当の友達なのかは分からないけど。


本音で話せた相手などいなかったのだし。


……違うか、本音を言えなくなったの方が正しい。


最初は只、嫌われたりイジメられるのが怖くて良い奴を演じていただけなのに。


よく相談を持ちかけられた時に当たり障りのない答えを返していただけ。


それだけ。


気付けば皆の相談係。


教師や生徒会長より働いてたんじゃなかろうか?


小さな悩みから、ちょっと変わった悩みまで。


友人同士の悩みは良く聞くけど、家庭環境の悩みは然るべき行政や教師に頼るべきでは?


拾った子猫の名前は自分の責任じゃないかな?そもそも悩みなのか?


胸の悩みは女子同士でお願いします。


皆の為の相談は優しいとは思うけど、委員会でやって欲しい。



少しでも役に立てていれば良いと思っていたけれど、


回答自体は心にもない事を言っていた気がする。

 なんて無責任。


いや、でもきっと僕が本音で回答し続ければ学年が崩壊していたのではなかろうか?


そう考えれば、昨今の政治家よりは責任感のある仕事をしてきたような気がする。


男女問わず恋愛相談も多かった。


少なからず僕のおかげで彼氏・彼女の関係になれたものもいたのだろう。


そのせいか相談は絶えなかかった。


当時気になっていた女子から、ある男子生徒に告白したいと相談を受けた日の夜は枕を濡らしそうになった。


クラスメイトが好きだと男の友人から相談を受けた翌日、その女子から告白された事もあった。


当然、彼の気持ちを知る僕が受け入れられるわけがない。今度こそ僕は枕を濡らした。




だからこそ僕は、


召喚されたと気付いた時に、


異世界に来たと知った時に、


嬉しかった。


期待したんだ。


誰も僕の事を知らないのなら、


やっと僕を始められると。


素直になれると。


思った通りに行動しようと。


出来ると。





でも、召喚されたのは僕だけじゃなかった。





そして僕が心から望んだ、


僕1人だけという願望は、


僕だけが生き残るという最悪の結末として叶うのだった。

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