第3話 異世界の様子
俺は本当に異世界へと転移してきたんだろうか……? 目の前に広がってる光景って、どこかの田舎の村って感じなんだけど……。いやいや、あの女神様のこれまでの親切・安心仕様から考えて嘘だとは思えない!
とりあえず異世界っぽいものをこの村から探してみようじゃないか。えーと……これは確実に農業をしているっぽいけど、米じゃないな。ここで作っているのは……あんまり自信はないけど、麦か……?
ふむ、平野でそれなりの広さの麦畑。ちょいちょい農家の人の家らしきものが見えるけど、日本家屋ではないね。なんというか……木造ではあるけど洋風感があって、でも豪華な感じは全然しない普通の小屋って感じ。……行った事ないけど、ヨーロッパの田舎にでも行けばありそうな風景って印象ー!?
「……これ、冗談抜きで地球のヨーロッパとかいうオチ……?」
他にも様子を見てみるけど、ちょっと遠くの方に川が流れていて……普通に水車がありますがな。あー、でも普通に使われてる水車とか地味に初めて見た気がする。って、やっぱり異世界感ねぇよ!
それにしても人の姿が見当たらないな? うーん、そういや今は明るいけど、時間帯ってどのくらいだ? 方角と太陽の位置が分かれば大雑把な時刻も……って、それは地球での話だから異世界じゃ当てになら――
「月が2つある……!?」
え、ちょっと待って! 何気なく空を見上げてみたら太陽も出ているけど、薄っすらと月が2つ並んでいるのが見えるんだけど!? おいおいおい、これはどう考えても地球じゃないだろ!
「おっしゃ! ようやく異世界感が出てきた!」
ふむふむ、日は高くないみたいだし月が薄っすらと見えている状況なら、早朝とかそういう時間帯か? それなら農家の人がいそうな状況でも人の姿が見えない事にも頷ける。
よし、そういう事なら早朝の散歩気分でこの村を軽く歩き回ってみようか。一瞬、異世界かどうかを疑ってしまったけど、これなら他にも異世界要素を見つけられそうだ。
ただ当てもなく歩いてみても良いけど、ここは折角だし麻袋の中に入っていた地図を見てみるか。えーと、あー、現在地の場所に赤く丸が付けられているっぽい。方角は……うん、分からん! でも川と水車があるからある程度の見当はつきそうだ。
それにしても本当に普通の農村っぽいねー。軽く地図を見た感じでは、1箇所ほど建物が集中している場所はあるけど、基本的に建物は疎らっぽくて、大半が農地みたいだな。
「……ん? これって……魔法陣? あ、剥がれた」
見ていた地図の右上に魔法陣っぽいものがあり、少し触ってみたらシールのように普通に剥がれた。……これ、剥がしても大丈夫なやつ? そういや魔法がある世界の筈だから、これがその魔法関係のもの?
「……特に地図に変化はない……か?」
思いっきり魔法陣っぽいものが剥がれてしまったけど、手に持っている地図にはこれといった異変はない。……というか、そもそもどういう効果があったんだ?
ちょっと貼り直してみようとしたけど、上手く貼れないし……! くっ、どうやって貼ってたんだ、これ!?
うーん、異世界へのパンフレットみたいな小冊子を読み進めてみるか? あの女神様がくれた親切・安心仕様なら魔法についても書いている気はするけど……何かそれをするのはもの凄く負けな気がする……。
「あー、くっそ! 中途半端に選択肢があるのが絶妙に悩ませる!」
確実に正確な情報が載っているとここまでの流れで確信出来てしまうからこそ、この選択肢を選ぶのに躊躇する。くっ、チート能力を望みはしたけど、こういう形のチートは望んでないぞ!
あの小冊子、言ってしまえば初心者向けの女神様からの親切チュートリアルだもんな。でもって、多分、この世界での常識的な内容が書いてあって、それ以上のものは無いとみた! だって、今のところただの親切・安心仕様なだけだし……。
ここで葛藤をしていても仕方ないし、とりあえずどうしても困る状況までは自力で何とかしよう。あれに頼るのは最終手段だ、そういう事にしておこう!
あ、そうだ。ここが異世界だという事は分かったし、使い方は分からないけど魔法があるという事も分かった。だったら、よくあるあれもあるんじゃないか?
「おっしゃ、試してみるか! ステータスオープン!」
……何も出てこない。まぁ何となくそんな気はしてたよ。でもさ、異世界ならこの辺のお約束は守れや! くっそ、そんな気はしてたとか思って誤魔化そうと思ったけど、やっぱなし! その辺のお約束は守れー!
ふぅ、落ち着こうか、俺。あれだ、ステータスを表示するお約束がステータスオープンだけとは限らないじゃないか。ほら、鑑定魔法とか鑑定スキルとか鑑定アイテムとか、そういう特殊な手段が必要な場合もあるからね。
魔法がある事はあの女神様が断言してくれているんだから、そっちの方向性で考えておこう! ……小冊子を見れば分かりそうな気がするけど、そこは断固として拒否だ!
「そちらの方、少しよろしいですか?」
「えっ?」
色々と内心での複雑な気持ちと戦っていれば、背後から透き通った綺麗な女性の声が聞こえてきた。こ、これはもしかして、俺のヒロイン登場か!?
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