第11話 垣間見える光明

 俺は機体をホバー移動させて奴へと突っ込んでいく。そのまま上段から大剣を打ち込む。奴は盾で大剣を受け止めたが、片腕だった為か少し体制を崩した。しかし、隊長格らしく直ぐに反撃してくる。長剣をマジステールの頭部へ向け突いて来た。俺は右側、すなわち奴が盾を持つ左方向へと回避したが、それは奴も織り込み済みだったらしい。くるりと身をねじって水平の剣撃を加えてきた。その長剣を俺は大剣で受け止める。


 格上、しかも出力は倍近い機体相手だが、両手持ちの大剣と片手持ちの長剣で押し合えば、両手持ちの大剣が押し勝つ。奴は一旦下がって仕切り直そうとするが、そんな暇を与えてやるつもりはない。リーチの差を生かして大剣でリクシアスの顔面を突く。奴はその突きを盾でいなし、長剣をマジステールの腹部目掛けて突いて来た。俺はその突きを左、奴の右方向へと回避してから逆袈裟に大剣を振り上げる。大剣は奴の右ひじへヒットし、関節が逆方向へと折れた。そして奴は長剣を手放した。


「くそう。右腕を取られた。だが負けん」


 リクシアスは盾の下端を俺に向けて突っ込んで来た。そこには刃が仕込んであり、盾の質量と併せて相当な破壊力がある。しかし、大剣と比較して間合いは絶望的に近い。

 俺は大剣で奴を突き、それは奴の左肩に突き刺さった。グラリと態勢を崩してリクシアスがよろめきながら後退する。俺は大剣で奴の頸部をぶっ叩く。


 勝負あった。

 リクシアスの頸部は折れ曲がり、カメラアイは光を失った。そしてゆっくりと仰向けに倒れた。


 上空で待機していた四機のリクシアスは俺を囲むように着陸してアサルトライフルを構えた。


「閃光のクルーガー。動くな。投降しろ」


 一対四では分が悪い。

 しかし、援軍が来るとすれば今、このタイミングになるはずだ。そう、最初の攻撃から数分経過した。生き残っているアドヴァンサーが飛び立つタイミングは今だ。


 予想通り、王都上空で空戦が始まった。


 第一波のミサイル攻撃から逃れた暗緑色のアドヴァンサー、アルガムが次々と離陸しリクシアスとの戦闘を開始した。機体性能も機数も劣勢だが、それでも味方がいないよりはずいぶんマシだ。


「オーガスト殿下! ご無事ですか!! 葵も!」


 突然、詞からの通信が入る。しかし、この馬鹿者は不用意に王子の名を叫んでいた。


「無事だ。それと余計な事を言うな」

「余計な事って何よ。どおおおおおおおおおりゃああああああ!」


 詞は何やら勇猛? な叫び声をあげていた。そして王立工廠の方向から大型の、黄金色の機体がホバー走行しながらっ突っ込んで来た。防御システム実験機のルクレルクだった。


 四機のリクシアスはルクレルクに向かって一斉に発砲した。76.2㎜の砲弾が次々とルクレルクを襲う。しかし、その弾道は全てぐにゃりと曲がって命中しない。


 あれが、空間防御!

 十分な持続時間があれば無敵じゃないか。しかし、乗っているのは詞だ。


「詞。何馬鹿な事をやってんだ。直ぐに逃げろ!」

「私だってね。軍人なんだからね。あんたと王子が戦ってるのに指をくわえて傍観なんてできないのよ!」


 また余計な事を言う。通信が傍受されていれば、ここに敵が集中するのは目に見えている。


 詞はそのまま砲弾を蹴散らしながら、一機のリクシアスに体当たりをかました。相手もぶつけてくるとは思ってかったようでそのまま弾き飛ばされる。そして、別のリクシアスの頭部が遠距離からの射撃で破壊された。


「腹を狙ったのに、これ照準甘いじゃないの。全く」


 声の主はマルスリーヌ・ルノアールだった。銀色のラファールが五階建ての建物の上に陣取っているのが見えた。実験機を起動して窮地をしのぐ作戦には賛成するが、正規のパイロットが搭乗しなければその能力を十分に発揮することはできない。


「アオイちゃんが死んじゃったら、私、すっごく困るの。だって未来の旦那様なんだから」

「もう師匠。何言ってんですか! 上、来てますよ」

「きゃっ!」


 上空からの砲撃でラファールが炎に包まれる。そして足場にしていた建物が崩落してその中へと落ちていった。


「痛たたたた。埋まっちゃった」

「師匠、後で助けに行きます」


 マルスリーヌ女史は無事だったようだ。しかし、助けに行くためには帝国軍を押し戻さなければいけない。暗緑色のアルガムは一機、また一機と堕とされていく。絶望的な状況に変わりはなかった。


 俺たちを包囲していた六機のリクシアスだが、続けて詞が一機、俺が一機倒したので全滅させた格好になる。しかし、上空には十数機のリクシアスが集合していた。そしてその中には上位機種の指揮官機グリンドリンがいた。

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