タイムカプセルを開けましょう

結羽

タイムカプセルを開けましょう

 詩乃は1枚のはがきを見て溜め息をついた。

そこには、


『〇〇小学校同窓会のお知らせ

    XX年卒業の皆様』


とある。

成人式に便乗した同窓会のお知らせだ。

そこには「卒業の日に埋めたタイムカプセルを掘り出そう!」とも書いてある。


 過ぎ去った日々。

蘇ってくる懐しい記憶。

あの頃は何でも出来ると思っていた。


「大人になったらみんなで開けようね」


 そう約束したあの頃は時間が経てば自然に大人になれるって思ってた。

あの頃のような純粋な心は、もうない。

現実を知った。

自分がちっぽけであることも。

成人して「大人」になったからといって、何も変わらない……。


 ふいにあの頃の自分が今の自分に何を遺したのか気になった。

タイムカプセルを埋めたことは覚えているが、その中身までは覚えていない。

あの頃の自分は今の自分に何を期待していたのだろう。


 同窓会当日、詩乃は母校に足を踏み入れた。

当たり前だけど昔より古くて、でもあまり変わっていない母校。

集合場所になっている校庭の桜の木の下にはもう人影が見える。

詩乃は旧友たちの元へゆっくりと歩きだした。


「よしっ!じゃあ、タイムカプセルを掘り出そうか!」


 男子たちがそれぞれシャベルを持ち、桜の木の下を掘り出した。

女子たちはスコップを持ってある程度掘り出されてくるのを待っている。


「あれぇ? 見つからねーな」


 しばらくして桜の木の下を掘っていた男子たちが声をあげた。

この桜の木の下に埋めたのは間違いないはずだ。

少し範囲を広げて掘ってみることにしたらしい。


 だけど、タイムカプセルは見つからなかった。


「いつか絶対見つけよーね!」


「あぁ、来年も集まるか!」


 諦めて同窓会場に向かう同級生達。

その中で詩乃は思う。

これで良かったのではないかと。

タイムカプセルに詰めたのは過去の想い出。

それはもう私たちの心の中に確かに在る。


 過去に囚われてはいけない。

私達は未来に向かって歩いているのだから――。

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