第2話

俺の名前は、鳴山淳。

大学生だ。


今は、ちょっとした理由でたまたま同じ抗議を受けていた。

奏門佳奈に抗議の内容を写させてもらう条件に生意気にも学食で、昼を奢れと言ってきやがった。


まあ、今月はお金に余裕があるから良いんだがな。


「先輩ー?何してるんですか?早くしないと座る場所無くなりますよ?」と、俺の少し前を歩いていた奏門が立ち止まり。

こちらを振り返り俺を急かしていた。


「はいはい、今行くよ。てか、何?そんなに腹減ってんのー?」

「減ってますよ!お昼なんですから!!ペコペコですよ?」と、物凄い勢いで言われた。


「先輩は、お腹減ってないんですか?」

「いや、減ってるけどさ」


「じゃあ、早く行きましょうよ!」と、俺の服の袖グイグイと引っ張る奏門。


「ちょちょ!わかったから引っ張るなっての!?」



そして、学食に着いた俺達。


「うーん、どれにしようかなー?先輩はどれが良いと思います?」

と券売機の前で悩んでいる奏門。


「んー?あー、そうだなー?その250円の肉うどんとかで、良いんじゃないか?」

「えー・・・せっかくだから高い食べたいで・・痛いッ!?」

頭にチョップしてやった。

「まったく、人の金だと思ってお前なー?」

「良いじゃないですかー?それくらい。私、先輩の為にノート写させてあげるんですよ?ああー、こんなことならさっき声かけなければ良かったぁー。」と頬を膨らませていた。


「わかった、わかったよ。500円代なら何でもいいぞー。」

「えー。そこは、何でも好きなの食べて良いぞってー言うところですよ?」

知らねーよと、再びチョップをするがなんということだろうか。

俺のチョップは、奏門の頭に当たることなく真剣白羽鳥をするような形で奏門に受け止められていた。



そして、散々悩んだ挙句「これにします!」と奏門は、日替わりランチを選び。

食券を持ちカウンターに並んでいた。

ちなみに値段は、ぎりぎり500以内であった。


カウンターに並んでいる奏門をぼーっと見ているとふと手招きされたので、なんだ?と近づいてみると「先輩、何してるんですか?席を確保してて下さいよ!」と言われた。


「なあ、奏門」

「なんですか?」

「奢ってやったんだからさ。ノート写させてくんない?」

「いや、だから良いですよ?」

「じゃあ、早く貸してくれ」

「いやいや、そうしたら先輩いつ私にノート返してくれるんですか?」

「あ?あー・・次の抗議に・・」

「駄目です。私、帰ったら今日の内容を復習するので」

「真面目か」

「良いですか?先輩?こういうのはですね?日々の積み重ねが大事なんです。」

「そんなんだから、単位落とすんですよ?」

「ああ!?落としてねーよ!?てか、誰から聞いた!?」

「フフッ、・・・内緒です」と人差し指を唇に持っていき悪戯な笑みを浮かべる奏門。

クッソ・・誰だ。コイツにネタ提供したの・・・。


「それに、ノート写したら先輩帰るじゃないですか?」

「もちろん帰るさ。ゲームが俺を待っているからな。」


「私は、ですね?先輩・・」


「次の人、食券下さいー!」とカウンターの向こうからそう、声が聞こえた。


「あ、はーい」と慌てて食券を渡す奏門。


「じゃあ、俺は席を確保してくるわ」


と、その場を離れる俺。



座れる場所なないかと学食の中を歩き回る俺。


そして、ちょうど空いている席を見つけることが出来た。

俺は、席に座り奏門を待つことにした。

そして、しばらくして正面からなかなかのボリュームがあるであろう。

日替わりランチを持ちながら奏門が俺の確保した席にトレーを置いた。


「先輩、ありがとうございます。席を確保してもらって」

「それじゃ、ノート写させてくれ。」

「チッ、覚えてたか。」

「チッって、なんだよ!?良いから早く見せろ!」

「わかりましたよ。約束は、約束ですからね。」

と、愛用の可愛らしいリュックサックからノートが出てきた。

「はい、先輩どうぞ」

「ああ、悪い。感謝する。」


そして、俺は受け取ったノートを写し。

奏門は、もぐもぐと日替わりランチを食べていた。


受け取ったノートは、女性らしく可愛いらしい丸っこい字やカラフルなペンで重要な部分にアンダーラインが引いてあった。

自分で言うのもなんだが俺のより、見やすかった。


「先輩は、食べないんですか?お昼?」とおもむろに奏門が口を開いた。

「ああ?俺は、良いんだよ、後でコンビニでもよってなんか買って食べるから」

「まさか、コンビニのお弁当ばっか食べてるんですか?」

「五月蠅い。」

「あ、そうだ。これ、良かったらどうぞ。」と、日替わりランチの食いかけのエビフライを箸で挟み俺の顔の目の前に差し出してきた。


オイオイせめて、もっと体に良いものをくれ。

と思いながら俺は・・・気づいてしまった。


あ?何だ?これは、・・・・あれか?あーんしろってことか?

おいおい、なに考えてんだ?コイツ。無意識か?それともわかってやってるのか!?

と言うか、関節キスだろ?これ。


「いや、良い。お前が食べろ。それにちょうどノート写し終えた。ありがとうな。」

じゃあな、と俺は早々と席を立った。


「あ、先輩。はい・・どういたいまして。」


そして、学食を出た俺は、ふと頬を触った。

なんか、少し熱かった。





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