第5話見ようとしたもの

 マドンナこと永川さんとの接触から一日経って、次の日の放課後。

あまり牧田先生を待たせるのも悪いし、臨時報告でもしに行くか。それなりに情報は集まったし。

「あとは、永川先生なんだよな……」

「俺がどうかしたのか?」

 声につられて顔を上げると、永川先生がいた。正確には、なんかいろいろと荷物を持った、永川先生がいた。考え事をして下を向いていたせいで気が付かなかった。間が良いのか悪いのか。

「……随分と大荷物ですね」

 こういう時はさらっと話を逸らすのが得策だ。

「これ? 教材室に運ぶよう頼まれちゃって。こういうのって生徒に頼むもんじゃないの?」

 そんなの知らん。教師間でも使い走りとかあるんだな。

「手伝いますよ」

「手伝っても成績はやらんぞ」

「要らないですよ。私、成績良いんで」

「自分で言いやがった」

 事実無根である。成績は体育以外は10段階で8以上だ。

「じゃあ、これ持って」

 軽そうなものを渡された。成る程、こういう所なのか。

私たちは並んで教材室へ歩き出した。

「情報屋やってるんだって?」

「はい? そう名乗った覚えはないんですけど?」

 いきなりの質問に、食って掛かるような答え方をしてしまった。いけない、いけない。

昨日蘭らんが言ってたよ」

 まさかそこから情報が漏れていたなんて。ちなみに、マドンナの下の名前は蘭だ。

「あまりそういうことするなよ。トラブルの元になるし、よく思わないやつもいるだろ」

「自重はしてますよ。それに、タダでは情報あげないので」

 私は情報で情報を買っている。情報屋はそれで成り立っているのだ。昨日だって、永川さんから情報を貰って、私も情報を提供した。情報を引き出す事はあれど、情報を無償で提供することはない。

 この人にも必要であれば情報を提供するつもりだ。それなりの対価を見込めれば、クライアントの秘密を守る気もない。

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