第3話見えた過去
「田辺さんは凄いですね」
「別に、凄くなんてないですよ」
手元の書類は残り少ない。そろそろ終わりか。
「牧田先生は、なんで永川先生のこと好きになったんですか?」
何となく、訊いてみた。友達になんで彼氏と付き合おうと思ったの?って訊くぐらい何となく。だから、答えてくれなくても良かった。
「私が教育実習生の時、初めて永川先生にお会いしたんですよ」
「以前からの知り合いだったんですね」
「永川先生は気付いてないみたいですけどね」
牧田先生は苦笑をこぼした。その気持ちも分からなくもない。好きならなおさらだろう。
「覚えてなくても仕方ないんですけどね。私は他の先生が担当でしたので」
教える教科が違えばそうもなるか。仕方なくはあるのかも知れない。私だって教育実習の先生の名前をいちいち把握してる訳ではないのだから。
「その時から仕事熱心で優しい人でしたよ。永川先生に教えられている生徒達が羨ましいくらいに」
なんと言うか、それは聞きたくなかった。先生、生徒に嫉妬しないでください。
「この学校に来て、永川先生にまたお会いして。いろいろ教えてもらえて。凄く嬉しかったんです。一緒に仕事をしているだけで幸せです。て、何で顔を覆ってるんですか?」
甘い、甘いよ。純粋かよ。なんか聞いてるこっちが恥ずかしくなって顔を覆っちゃったよ。これからは軽々しく他人の過去に入り込むのはやめよう。
「はー。まぁ、先生にはいろいろ聞きましたし、ここは私が一肌脱ぎましょうか。永川先生について、情報を提供してあげます」
「……何か知ってるんですか?」
丁度書類をまとめ終わった。これで帰れる。
「いや、今のところは何も? これから情報収集するんです。私の趣味は人間観察と情報収集ですから」
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