第2話見えないこと
なんて考えたせいなのかもしれない。その機会は早くも来てしまった。放課後、書類を一人でまとめている牧田先生を見かけてしまった。かなりの量があったので、そのまま見過ごすのも可哀想で、声をかけてしまった。
しばらく私達は雑談をしながら作業を進めていた。授業の進め方はどうかとか、分かりやすいかどうかとか。教師として生徒の意見を聞きたかったのだろう。まったく、熱心な先生だ。
「
なんて問われれば聞くことは一つだろう。
「先生は永川先生のことが好きなんですか」
「えっ!? な、なんで、ですか?」
「いや、動揺しすぎです。別に、見てれば分かりますよ」
ここまであからさまに動揺するとは。よくこれで今日までバレてこなかったものだ。
「そ、そうなんですね……」
「告白とかしないんですか?」
これはほんの興味本位だった。別に告白しろと煽るつもりはない。大人の事情に首を突っ込むつもりは毛頭ないのだ。
「し、しませんよ。それに、私じゃ永川先生には釣り合いませんし」
随分と自信無さげな言葉だ。
「別にそんなことないと思いますけど?」
「私よりもあの子の方がお似合いです。何組かは知りませんが、髪の長い可愛い子」
髪の長くて可愛い子。曖昧だけど、何となく誰かは分かる。
「マドンナのことかな?」
「そう言われてるんですか?あの子、すごく先生と仲が良さそうでした」
その言葉で確信した。でも、彼女が永川先生と仲が良いのはそういうことではかったような気がする。
「へー。でも、関係ないと思いますよ。釣り合う釣り合わないは周りじゃなくて本人が決めるものですからね」
なんだか、私の言葉じゃないような気がした。牧田先生の欲しい言葉をわざわざ選んでいるような。そんな気さえする。
それがとてつもなく嫌だった。
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