見えてるものと見えないもの

山田維澄

第1話見えてること

 私には今、気になっている人がいる。こんな言い方をすると恋愛的な何かだと思われるかも知れないが、残念ながら違う。気になるというのは人間観察的な意味で面白い、興味深いということだ。なので、改めて言おう。私には、興味のそそられる人がいる。

 それは私のクラスの副担任、新人女教師の牧田まきた先生だ。若い上に、客観的に見て可愛い容姿をしているため、生徒の間ではマキちゃんと呼ばれ親しまれている。断っておくが、これはナメられている訳ではない。

 さて、では何故この牧田先生に興味をそそられるのか。それは、この先生が非常に分かりやすいからだ。牧田先生はどうやらうちの担任である永川えがわ先生に惚れている。ちなみに、永川先生は現在28歳。明るい性格やノリの良さから、女子だけでなく男子にも人気のある教師だ。牧田先生に確認したことはないが、好意がダダモレである。

 HR中はいつもガン見。話をしている時だけでなく、並んで歩いているだけで嬉しそうにしているのだ。気付かない方がおかしい。と私は思っているのに、私以外気付いている気配がある人はいない。鈍いのか、ただ単に教師に興味がないのか。

 鈍いと言えば永川先生だ。こんなにも好意を向けられていると言うのにどうして気付かない?あぁ、もしかしてあれですか。好意は向けられなれてるとかそういう感じですか。気付いているけど無視してるみたいなそんな感じですか。

 でも、永川先生がそんな人であれば、牧田先生も、女子生徒たちも永川先生を好きになっていないかもしれない。とかく人間観察が好きな私の方が、そうでないことを分かっているのかも知れない。

 まぁ、牧田先生には機会があれば聞いてみますか。

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