願い



貴方を、

私の唯一で、愛してたまらない、貴方を、

私の全てで殺してしまいたいと思う。

貴方自身でも手の届かないところまで、

この手で触れて、力を込めて。

そんなことをしてしまいたいほど、

貴方が憎い。


貴方が、私から、私の何もかもを奪ったから。

選択の余地も、

思考の自由も、

ふらりと真夜の散歩に出ることも、

目覚めて孤独に絶望することも。



貴方を、

私の大切で、たまらなく憎い、貴方を、

私の全てで守りたいと思う。

何者にも手を触れさせない場所に、

静かに閉じ込めて、鍵をかけて。

そんなことを考えるほど、

貴方が愛しい。


貴方が、私に、かけがえのないものを与えたから。

貴方の好きなものを覚えたことも、

貴方のためにと考える時間も、

雨上がりに虹を見上げることも、

目覚めて隣に在る温もりも。



私の愛だと、貴方は笑ってくれないだろうか。

憐れだと、貴方が抱いてくれないだろうか。

他には何も要らないと、

貴方さえ在れば良いと、思ってしまったから。

貴方さえ居れば良いなんて想ってしまったから。

私のこころを奪った貴方が憎いほど愛しいよ。


どうか、そんな愛で、

貴方を愛させてくれはしないだろうか。

私の愛に生かされて、そうして、息絶えて欲しい。

それだけ。

それだけだから、叶わなくとも、

貴方が安穏であれと想う。

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うそつきの、うた 澄乎 @stranger_

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