一杯目 出会いの珈琲

「いらっしゃいませ」

重く厚い扉を開けた後、聞こえてきたのはきれいな声だった。


「空いている席にお座りください」


店内をぐるっと見回しカウンターが空いているのでそこに座った。

奥から白と黒のドレスを着たウエイトレス 俗にいうメイドが出てきた。


(やべっ金足りっかな…)


個人的な考えだがメイドがいるところは何かと高いイメージがある。


「すみません 初めてなんですけど…」


恐る恐る聞いてみた。


「大丈夫ですよ リラックスしてください」


女性の店主はどこかミステリアスな感じで答えてくれた。


「はい!こちらメニューになります!ごゆっくり!」


メイドの方は元気いっぱいに答えてくれた。

メニューを見るといろんな珈琲の名前がずらっと並んでいる

正直どれが何なのかわからない思い切って聞いてみよう。


「すいません おすすめってありますか? 珈琲そんなに詳しく

なくて…」


ミステリアスな店主は微笑みながら


「お客様は甘党ですか?それとも苦味が強いほうが好きですか?」


と質問をくれた。

自慢ではないが自分はものすごい甘党だ。いまどきの女子高生の

ように新しいスイーツの情報に目がない。

まぁそのせいで自分の体の横幅が大きくなってきているのだが(汗)


「甘いほうが好きです」


「ではギチャタイニなんていかがでしょう?」


聞いたことのない名だ。それにしてみよう。


「じゃあそれでお願いします」


「かしこまりました 淹れたてをご用意しますので少々お待ちください」


店主はコーヒーミルを取り出し目の前で挽いてくれた。

コーヒー豆が音を立てて挽かれる音を楽しみながらカウンターから

眺めていた。

ふと奥の棚に目が行った。

そこには様々なリキュールや酒があった。

まるで宝の山のように見え思わず興奮した。

未成年ながらカクテルが好きでよく勉強している。

カクテルが好きといっても作る人のほうで、お客様を楽しませる心意気にあこがれている。

昨日はその勉強のおかげで寝不足だった。


「お酒も出すんですか?」

いったん冷静になり、落ち着いて質問をした。


「えぇまぁ一応…でもあんまり詳しくなくて夜の営業は

ここしばらくやってないんですよ」


もったいない実にもったいない。

これほど多くのリキュールを置いているのに


「お待たせしました ギチャタイニです」


豊かな香りが鼻をくすぐる心地よい香りだ


「このまま飲むのもいいんですがお砂糖を入れてみて下さい」


勧められたのでやってみよう。

純白の砂糖をサラサラと入れ香りを楽しみながら、ギチャタイニを

口に運ぶ。

驚きを隠せなかった。今まで飲んだコーヒーとは何もかもが違う

フルーティーな酸味が特徴的で美味しい。まるでワインのような味だ。


「おいしいですねこの珈琲めちゃくちゃ好みの味です」


テンションが上がってしまった。ちょっと恥ずかしい。


「ありがとうございます」

店主は少し笑った


「ここにこんな店があるなんて知りませんでした。居心地もいいですし

また来ます」


そう自分が言うと店主は笑いながら


「あなたの居心地に合ってよかったです」


とつぶやいた。

自分は少し戸惑い聞き返してしまった。


「居心地に合う?」


店主は続ける


「はい 少なくともお客様と一緒にこの店の良さを共有できたのが

うれしいのです」


その言葉を聞いた瞬間電撃が走った。

この人はすごい

それと同時にここで働きたいという感情が込みあがった


「あの・・もし迷惑でなければここでアルバイトさせてもらえませんか?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る