回顧、その過去

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 入学時のテストで、僕に魔導力が皆無であるという測定結果が出たとき、その場にいた校長先生は失望の色を露わにした。


 僕は、『発現不全』という状態に陥っていると宣告された。


 それは、魔力を持つ人間が何らかの要因によって魔力を体外に放出できなくなった状態を言うらしい。世に知られている症例では子供に多く、『発現不全』を患うと一年と経たず持てる魔力の全てを失うとされている。まるで、使われない器官が徐々に機能を弱めていくように。そしてその一年の間は、自然放出されない魔力が体内に溜まるため一時的に保有魔力が高まる。僕が異常な魔力量の測定値を出したのは、それがためだとされた。


 魔力を持たない者は、魔法学校に所属することができない。


 本来であれば、すぐにでも除籍となるはずだった。


 幸か不幸か、僕はそうはならなかった。


 まだ現に魔力を失っていない状態であり、またユリア先生の口添えがあったためだった。


 ユリア先生が僕をかばってくれた理由までは知らない。


 たまたま入学前の列車で縁があったからかもしれないし、僕じゃなくてもユリア先生なら同じようにしただろうとも思う。



 その責任を感じてか、入学後もユリア先生は特に僕に目を掛けてくれていた。勇者という立場に鑑みると一か月から二か月に一度校舎に立ち寄ることができれば十分なところを、二週に一度は僕の様子を見に来てくれた。もしかしたら、他の用事のついでだったかもしれない。けれども、僕にとっては理由なんて何でもよかった。座学でいくら成績を残せても、魔法の発現に関わる授業では一切の記録を残せない僕に、学校内での味方は誰もいなかった。


 一年が経ち、なぜか僕の魔力は消失しなかった。



 お荷物が除籍にならなくて、がっかりした先生もいただろう。それは生徒にしても同じだったと思う。


 けれども、ユリア先生は違った。


 僕と同じように喜び、希望を繋いでくれた。


 体外で発現ができないのであれば、と、体内での魔法陣展開という荒業をユリア先生と発明したのは、その二年目の春のことだった。


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