二章 魔王の候補
「へえー……」
一通り話を聞き終わった僕は、分かったようなよく分からないようなそんな気分だった。
魔王という存在が失われてから、魔界は傾き始めた。
四天王によって均衡が保たれているといっても、その内の一人は人間界で姿を消してから久しく、そしてもう一人は魔界の治世に興味がなく奥地へ引っ込んでしまったという。そのため、今魔界で最も力を持っているのが実質的にこの二人――ミルメア=ヴァニーユと、カタリナ=カタラーナだった。
そんな中、ミルメアが次期魔王の擁立を宣言した。
それがなぜか僕で、当然そんな一方的な宣言を容認できないカタリナは意義を申し立てに来た、という。以上。それだけ。
「ねえ、ミルメア。自分で立候補するなら分かるんだけど、なんで僕なの?」
「おう、それはお前がオスだからだな」僕の質問はカタリナが答えた。「魔界の存続のためには、種を維持する必要がある。よって、魔王はオスでなければならない」
「種、って」
どう、とか色んな疑問は沸いたものの、これに関しては深く知りたくなかったから聞かないことにした。
「それは、まあ、いいんだけど――」
「いいの!? ちょっとくらい迷ったりしなさいよ! あんたはあたしので、そんな、不特定多数と、そんな――」
「そういう『いい』の話をしてないから! 話がややこしくなるから『一旦いい』って言ったの! それに、質問の意図もそういうんじゃないから」
オスでいいなら、何でもいいじゃないか。例えば、くじ引きでもいい。
どうしてわざわざ人間界でたまたま出会っただけの僕を魔王にしようだなんてことを考えたのかって聞いてるの。
「それは――だって、あんたあたしより強かったし」
「いやそれも勘違いだったって分かったじゃない」
地下牢の一件を経て、僕の能力は魔法の打ち消しじゃなく、単なる魔法陣の破壊だって教えたはずだ。その『宣言』って今から取り消しとかできないのかな――
「勘違いじゃないもん!」
「あー、はいはい。痴話喧嘩はもうお腹いっぱいだからそろそろ本題に入ってもいいか」
「誰が痴話喧嘩よ!?」
カタリナが再度会話に割って入ってきた。
「とにかく、私は知りたいわけだ。ミルメアがここまで入れ込む、お前の実力を。お前が、真に魔王にふさわしいかを」
「あ、だからそれは勘違いなんだって」
「勘違いじゃないって言ってるでしょ!」
話がループに入ってしまったところで、その流れをユニフェリアさんが断ち切った。
「まあまあ。じゃあ、こうしましょう――」
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