第5話 むかしむかしのエタったファンタジー、3話め

お待たせ致しましたm(_ _)m←待ってないかな?(^_^;)

うーん、基本、写すだけですのですが、なかなか更新できませんね( ̄▽ ̄;)

すみません(;´д`)


いくらか、ほんの少しだけ手直しをしました。見直すと言葉が足らないのですね。

当時うっかりしたのか、考えが至らなかったのかは判りません。まあ、ありそうなのは手書き原稿だったから、校正、手直しが足らなかったのでしょう。←当時2度ほどは別用紙に書き直した覚えがあるのですけれど(苦笑)



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 それは、筋肉でもほぐすかの様に、その巨大な翼を伸ばし震わせる。

まるで羽ばたくかのような動作をゆっくりと繰り返すと、翼を背にたたんだ。

その仕草すべてが高圧的でもあり、優雅でもあった。

 その足もとにほうり出された者は身じろぎひとつしない。

 黒金の双頭竜は一つの首でその者を眺めながら、もう一方でそれを取り囲む兵たちをゆっくりと見回す。

その額には、高次の力の証である竜玉が赤と青に輝いている。

「大公はまだかっ」

 待つことにしびれを切らした、竜の高圧的な言葉に応えるように、大公がバルコニーにその姿を見せる。

「私がリーだ。ドラゴン、イルスは無事なのだろうな」

 大公は手に竜刀ガープを握りしめながら竜を見上げる。

それは、侮蔑する笑みなのだろう表情を浮かべ、細めた眼と歪めた口を見せながら彼を見下ろし、言葉を返す。

「そうか、お前がリーか。安心するがいい。偉大なる我が主人の花嫁たる身だ、丁重に扱っている。

 我が名はラルハス。魂に刻め。偉大なる我が主人の言葉を伝える」

 竜がその言葉を切るのと同時に、その足元にうずくまった人物は立ち、空ろな眼を大公へと向けた。

ガイルだった。

「ガイル!!」

 大公リーの驚きは、威厳すら忘れた態度により伝わってくる。

だが、ガイルはそれを打ち砕くように、空ろな、闇が凝り固まったかの様な言葉をつむぎ出した。

「…リーよ、我が義父ちちとなる者よ……。

 我が前に立ち塞がる事は許さぬ。

それが、たとえ義父とて容赦しない……」

 ガイルはそう語り終えると、繋がれた糸が切れるように膝をつきうなだれた。

「きさま…。ガイルに何をした!!」

 リーは相手を射殺すかの様な視線を竜に向けた。だがそれは、その事こそ至福の喜びであるかの様に、侮蔑するような気を発し、顔を歪めた笑みのようなものを浮かべたまま、その場にあり続けた。

「リ…、リー様」

 かすかにうめく声がリーの耳に届く。

ガイルは身じろぎしながら、青ざめた顔をこちらに向けようとしていた。

「…死の…、死の森へ……。そこに……」

 ガイルはそれ以上、最期の言葉を伝えられなかった。

必死の様子で、すべてを伝えようとするその姿を蔑むような視線で眺めていたラルハスは、満面の笑みを浮かべるように、眼を細め歪めた口を大きく開く。

その口は灼熱の炎の息を吐き出す。

 彼は生きながら焼かれた。そして炎は辺りを舐め、木々を、建物を包み込もうと広がっていった。

けれども竜の息は、竜刀ガープの発する光りにより、その竜の炎はあがく様にその上を這い回り、けれども大公の近くには決して近づけない。

 人々の叫び、そして喧騒の中を、竜は羽ばたきを繰り返し、飛び立とうとする。

射かけられた数条の矢も、ことごとく折れ弾かれる。

 笑いながら飛び立つ刹那、竜はこう言い残した。

「我が贈り物、気に入ってもらえたかな。人間どもよ。

 来るがいい。我が翼の下に屍を築くために」

 それは緩やかな円を描き、城を一周すると、その黒金の身を炎と星明かりにきらめかせながら夜の中に消える。

それを追う矢の軌跡も、夜の闇に飲み込まれてゆく。


  ◇


 リーはバルコニーから身を踊らせると、先ほどまでガイルだったものに走り寄っていった。

大公は死者のかたわらにひざまづき、そのこうべを垂れる。

 彼は自らの外套マントを外し、死者ガイルへとそっと掛ける。その身が隠れるときに、焦げ崩れた、ガイルが帯びていた彼の紋章しるしが目に留まった。

 彼がリーへと忠誠を誓い、臣下へとなってくれたときに自らの紋章として選んだもの。炎にその身を焼かれながら落ちてゆく竜だった。

- 「なあに、炎が私で、竜は打ち倒される敵ですよ」 -

どことなく不吉な雰囲気を放つその紋章しるしを、彼はそう笑い飛ばし、リーと共に幾つもの戦いをくぐり抜けてきた。

そして今回もそうなる筈だった。

「リー様、出兵をお命じください」

 後を追ってきた近衛隊長は、あふれてくる憤怒の感情を抑えて、そう進言した。ただし、その目は怒りと憎しみで燃えるようだ。

「いかん」

「なぜです!!

なぜいけないのですかっ」

彼はまさか拒否されるとは思わなかったらしく、その命令に反抗しようとする。

 大公は、彼の目の前に今は輝きを失った刀を差し出す。

「その刀は先ほどの…」

 リーは自らの心を整理するかの様に目をつむり、しばらくしてからその目を開けた。

「お前たちにはやってもらわなければならない事がある。それを今から話そう。

なぜこの竜刀ガープがここにあるか、その理由もだ」

 火は消しとめられつつあり、彼の周りに集まってきた兵たちに、大公は今までの出来事を語り始めた。

兵たちは一言も発せずに、じっと彼のことを見つめ、リーの言葉に耳を傾けていた。


  ◇


 自らの部屋へと入り静かに扉を閉めた大公は、疲れたその身を椅子の背に預けて凭れかかった。

 そしてふと、部屋に掛けられた亡き妻の肖像画へと目を向ける。

「老いたのかもしれんな……」

 それは彼の手によって命を吹き込まれたときから、変わらぬ微笑みを彼に与えている。彼女に向かってつぶやかれた一言が、リーの心の重さを語っているようだった。

 城は、その静けさを取り戻して、眠りに就こうとしていた。


  ◇



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今回は以上です。

お付き合いありがとうございました。


思ったより短かったですね(^_^;)

次回、メインキャラが登場を始めます。


今だからばらしてしまいますが、この当時、大公がなんたるかということが分かっておらずに書いていたのですね。←だから地方領主のような印象があるんです(苦笑)


リーにしても、ガイルにしても、だから、なんか田舎臭い人物像なんです(笑)

戦禍にまみれている土地柄にしても、王家の血筋ならもう少し形式を気取るし、腹芸もできるだろうと思います。←まあ、今なら彼の家名を大公にはしないでしょうね(^_^;)


このお話での大きなでまかせのひとつです。今回小さなところは直したけれどもここは残しました。

うそででまかせの部分でも、まあ、彼はここでは大公です。

それもまあ、物語ですね("⌒∇⌒")

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