第32話 名付け 後

「少し落ち着いてくれ。これじゃ、話ができないじゃ無いか。」


「ごめんごめん。名前と聞いて興奮しちゃったよ。」


「そうね・・・。ごめんなさい、名前が貰えるのが嬉しくって。」




精霊達は何とか落ち着きを取り戻し静かに浮遊する。


しかし興奮が冷めていない為ソワソワしている。




「名前の事なんだがまだ決まって無いんだ。これからエリスと二人で考えるよ。」


「何だまだ決まって無かったのか。決まってから呼んで欲しかったな。」


「私も一緒に考えていい?男の子に決めてもらうとどんな名前になるか怖いから。」




二体の精霊達はそれぞれの反応を示した。


雷の精霊は落胆を、光の精霊は一緒に考えると言い出した。




「じゃ、クライスは雷の精霊と名前を決めて。私はこの子と決めるから。」


「皆で考えるんじゃないのか?」


「女の子は女の子で考えます!!可愛い名前にしようね。」


「ねーーー。」




クライスと雷の精霊から出来るだけ離れていく二人。


そして、顔を近づけて話し込みだした。




早速、意気投合してるし・・・・。女って凄いな。




「こっちも決めるか。」


「そうだね、格好いい名前だよ!!」


「あれ?考えるの僕だけなのか?」


「そうだよ。僕が考えても意味ないじゃ無いか。」


「一緒に考えようよ?」


「え?やだよ。」




当然の如く拒否をする雷の精霊




「だって、自分の名前だよ?自分で決めたら意味ないじゃん。」


「そうかな?自分の好きな名前だよ。付け放題だよ?」


「自分で付けるのは嫌でよ!付けてもらうから良いんじゃない。」


「「・・・・・」」


「わかったよ。考えます。」


「頼んだよー。」




まったく!!人任せにするとは。いいよ!!!格好いい名前考えてやるよ。




クライスは真剣な顔をして唸りだす。その間も雷の精霊は浮遊するするだけで何もしない。


暫く唸っていたクライスだったが良い名前が浮かんだのか笑顔を見せる。




「決まったぞ!!!クールはどうだ?」


「え!!!嫌だ!!!格好悪い!!!」


「クールだぞ?格好良いじゃ無いか。」


「君・・・・センス無いだろ?」




ちくしょう!!もう一回考えるか。




もう一度考え込むクライス。そこにエリスと光の精霊が近寄ってきた。




「どうしたの?まだ決まって無いの。」


「私の名前は決まったよー。」


「いいなー、僕はまだまだ決まりそうにないよ。」


「やっぱりね・・・。クライスの考えた名前何だったの?」


「クール・・・・・。」


「「格好悪いね。」」


「うるさいなーーーーー。良いじゃ無いか!!」




三人からのダメ出しに本気でへこたれるクライス。


呆れたエリスが助け舟を出してくる。




「仕方ないなー。私が考えてあげるよ。」


「本当か?」


「私も可愛い名前付けてくれたから安心していいよ。」


「え、俺はどうすれば?」


「クライスも考えといてね。」




そうしてエリスは雷の精霊の名前を考えていく。


何度も何度も考えては違うと呟きながら集中しているエリス。


そして少しの時間が経った頃エリスが声を挙げる。




「決まったーーー。」


「本当か!!!」


「決まったよ、雷の精霊君。」


「早く、聞かせてくれ。一体何て名前だ?」


「君の名前はインドラ!!インドラだよ。」


「インドラ・・・・インドラか。うん、いい名前だ。格好良いじゃ無いか。」


「え?俺の名前と変わらないじゃ無いか。」


「全然違うよ・・・・・。」


「そうだね。君と違ってしっくりくる名前だ。」


「良い名前じゃない。まぁ私の名前には負けるけどねー。」




クライスを置いて三人は盛り上がっていく。


置いてけぼりを食らうクライスは少しいじけてしまった。




「ごめんってば!!でも、クールはちょっと無いかな・・・・。」


「くそーー、もういいよ!!!どうせ、センスの欠片も無いよ!!!」


「そんな、怒らないでよクライス。」




拗ねたクライスを宥めるエリス。


暫く機嫌が直るまで時間が掛かったがクライスは機嫌を直す。




「で、光の精霊はなんて名前になったの?」


「私?聞いて驚きなさい!!私の名前はセレネよ!!!」


「「おーーーー。」」


「「可愛いでしょー。」」




男と女で同じ言葉を紡ぐ。


こういう場面では息がピッタリなのである。




「これで、僕達の名前が決まったね。」


「そうねー、私達の名前が決まったわ。」


「僕は、インドラ!!雷のインドラ!!!」


「私は、セレネ!!光のセレネよ!!!」




インドラとセレネはお互いにハイタッチをして喜びを表現する。


クライスとエリスが二人して微笑ましく眺めていると部屋のドアがノックされる。




「起きたか、クライスよ?今日の事で少し話があるのじゃが・・・。何をしておるのじゃ?」


「リリカ様!!すいません、何度も倒れてしまって。」


「気にせんで良い。で、一体どうしたんじゃ?」


「今、精霊達に名前を決めていたんですよ。ようやく名前が決まりまして二人が喜んでまして。」


「ほおーーー、そうかそうか。それは良かったのーー。では、名前は夕食の時に聞かせて貰うとするかの。」


「「え、夕食?」」


「そうじゃ、今日はもう遅い。夕食を食べて泊っていくと良い。」


「良いんですか?」


「わらわが良いと言ってるのじゃ。素直に甘えておくが良い。家族には使いを出して連絡しておいておくぞ。」


「そうですか・・・・。では、お言葉に甘えさせていただきます。」




クライスとエリスの一泊が決まる。


この後、三人で夕食を取り精霊達の名前を披露した。


そして、クライスの体調を考え早めに休むことにして激動の一日が終わったのだった。

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