第29話 秘密
「さて、次は貴女との話し合いですね。」
「ふぇ!!!」
「ふふふ、そんなに驚かなくても。貴女がこれからどうするかの確認をしたいのですよ。」
リリカ様が微笑みながらクライスの介抱をしている私に話しかけてくる。
やっぱり、そうなるよね。私も理解できないでいるんですけど、待ってくれないよねー。
クライスも突然あんなこと言って・・・。そりゃ嬉しいけど心の準備位はさせなさいよ!!
「大丈夫ですか?」
「あははははは・・・・。大丈夫じゃないですって言えば見逃してくださいますか?」
「そう言う訳にはいきません。申し訳ありませんが、先程のクライス君からの答えも合わせて聞かせていただけますか?」
「そうですか・・・・。」
「状況が大分変化いたしました。いきなりの事で貴女も混乱しているでしょう。しかし、早ければ早いほどこの状況に対処がしやすくなります。」
リリカ様が真剣な表情で答えを促してくる。
私としての答えは決まっている。
クライスと一緒にいたい、行きたい。
でも、それでクライスに迷惑を掛けてしまったら?クライスはきっと全力で守ってくれる筈・・・、それでいいの?ただ足を引っ張る存在で?
「クライス君の事が心配ですか?」
「はい・・・・。」
私は頷くことしかできない。
「クライス君の迷惑になると?」
「はい・・・・。」
だってその通りだと思う。
「はーーーー。お茶会の時に話したと思いますが貴女には才能があります、その才能を伸ばす事だけを今は考えなさい。それがいつかクライス君の助けとなるでしょう。」
「クライスの助けに?」
「ええ。貴女は既に一度クライス君を助けています。あの時の魔力制御は素晴らしかったですよ。正直に言えば私以上と思いました。」
「そんな・・・、あの時は無我夢中でしたから。」
「そうですね。ですから気にはなりました、貴女は自分の潜在魔力についてある程度把握していましたね?」
リリカ様の質問に身体が強張る。
やっぱり、気付かれるよね。流石はリリカ様、この人の前では隠し切れないか。
「リリカ様には隠し切れないと判断しました。これから話すことはクライスには言わないでくださいますか?」
「私の名に懸けて一切外部には漏らさないと誓いましょう。しかし、クライス君にもですか?」
「クライスにはいずれ話します。リリカ様も時期が来れば話していただいて構いません。」
「わかりました。では貴女の秘密を聞かせていただけますか。」
すーーーーー、はーーーーーー。深い深呼吸、今から私の秘密を打ち明ける。両親以外知らない秘密。
「私は物心ついた時から魔力が見えていました。」
「魔力が見える!!!」
「はい、世界の魔力から一人一人の魔力を見る事が出来ます。」
「エリスさん、自分が言っていることが解っていますか?つまり貴女は・・・。」
「私は生まれつきの魔眼持ちです。自分の意思で世界魔力の流れを把握でき、一人一人の魔力の流れも把握できます。その人の適性を見る事もできますし、流れを把握すればある程度は予想もできます。」
「なんてことでしょう。クライス君だけでなく貴女まで・・・・。」
リリカ様が驚愕の表情を浮かべる。
当たり前だ、魔眼持ちなどおとぎ話の中でしか聞いた事が無い。魔眼にも種類があったはずだけど私のは戦闘向きではない筈。それでも、貴重な存在には変わらないだろう。
「エリスさん、その話は本当ですか?」
リリカ様が疑いの眼差しで問いかけてくる。
仕方が無い事よね、証拠を見せますか。
私は、自分の両目に魔力を集める。普段は魔眼を抑えるために封印魔法を掛けているが解除する。
封印が解けると私の本来の眼である金色に輝く瞳が現れる。
「これが、証拠です。」
「普段の緑と青のオッドアイは封印魔法の弊害でしたか。それが貴女本来の眼なのですね。」
「はい、この魔眼は常時発動しています。その為、常に魔力が消費されていますし膨大な情報が魔眼を通して私の頭の中に入ってきます。ですので、発動時間が長ければ長いほど私は壊れていきます。」
「それは不味いですね・・・、もう結構ですよ。」
リリカ様に確認して貰って封印魔法を掛け直す。
頭が痛い・・・。少しの時間解放しただけでこの痛み、何時になっても慣れそうにない。
「確認が取れました。これでは貴女もクライス君と同じで強制的にでも王都に来てもらわなくてはなりませんね。まさか、魔眼持ちが存在していたなんて。今日は驚かされることばかりですね。因みに貴女のご両親も魔眼持ちなどとは言いませんよね?」
「それは大丈夫です。しかし、私の母様の一族は代々魔眼を持って生まれる事があるみたいです。母様は持っていませんが、御婆様が魔眼持ちだと聞きました。」
「御婆様もですか・・・。因みに御婆様は今何方に?」
「私が生まれる前に亡くなったそうです。私は母様に封印魔法を教わりました。」
「王国にも確認されていない一族ですか・・・。」
「私も詳しくは知りません。大人になれば教えると言われてますので。」
これで全て話した。
後は、リリカ様がどうにかしてくれる筈。
「全て納得できました。幼き頃より母親によって魔法は鍛えられていたと。」
「はい、自分が制御できる範囲ですが・・・、ある程度の事は教わっています。」
「貴女の懸念が判明しました。自分の存在がクライス君の弱点になりかねない、そこが一番の問題ですね?」
「はい・・・・。」
「なら、強くなりなさい!!!クライス君に甘えず逆に頼られる程強く。」
「私は強くなれるでしょうか?」
「何度も言わせないでください。貴女には才能が有ります。魔眼も今は使いこなせていないようですが使いこなせる努力をしなさい。そうすれば自ずと力は付くことでしょう。私の名の下に二人を鍛えます。お互いがお互いを守れるようになりなさい。」
リリカ様の力強い言葉。
そうか・・・、強くなれるんだ。私でもクライスを守れるかもしれないんだ。
エリスは全てを決意した顔をリリカに向ける。
「わかりました。私強くなります、クライスと共に生きていくために。私を王都に連れて行ってください。」
「良い返事です。ご両親の説得は私に任せてください、決して悪い様には致しません。」
「お願いします。」
エリスの王都行きが決定した。
リリカはクライスの看病をエリスに任せて部屋を後にする。
■■■■
足早に自室に戻るリリカ。
自室に入るなりメイドに紅茶を頼み椅子に掛ける。
背もたれに深く身体を預け一息つく。
「ふふふ、あーははははは、何と言うことじゃ。まさか、この様な出会いが待っておったとは。初めて会った時から宝石の原石に似た可能性を秘めていたが・・・・。予想以上じゃ、これからの国を支える最も優秀な人材に成りえるぞ。腐らさぬように細心の注意を持って育て上げねば!!先立っては二年後の学院じゃな。他の貴族やその子息や子女には触れさせんぞ。選民意識が強い者がおらん訳では無いからの、そこは要注意じゃな。」
後は、二人の両親の説得とウース辺境伯への報告。
そして、リリカの予想通り遅かれ早かれ他の貴族にこの話が漏れるだろう。
対応を誤れば無駄に血が流れることは確定している。その対処にも追われる日々に辟易する自分の姿を予想しながらもリリカは笑いを堪える事が出来ず高らかに笑うのであった。
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