第28話 話し合い
「では、話の続きといきましょうか。クライス君は王都で私の研究室預かりとします。精霊と混ざってしまったクライス君には早急に魔力制御の向上を頑張ってもらいます。精霊が気まぐれで力を貸した場合にその力を制御できなければ大変な事になります。」
「大変な事ですか?」
「はい、もし集めた力が暴走をすれば周りにどれ程の被害が出るのかは想像ができません。クライス君がこのまま成長した場合に魔力制御が疎かですと高確率で暴走が予想されますので。」
「そ、それは不味いですね・・・。」
「ですので、早急な魔力制御の訓練と並行して剣術の師を探します。魔力制御だけではもしもと言う時に自分を守ることが出来ないですから。」
「そうですよね・・・・。」
自分の力不足が辛い。しかし魔力制御か・・・、俺にできるのか?いや、できないと不味いのか!!
もしかしたら、エリスに怪我をさせるかもしれないんだ。
「それと、クライス君が望むのならですが精霊達との分離をしましょうか?」
「え!とれるんですかこれ?」
「それはまだ分かりません。ここの設備では不十分な検査しかできませんので、王都には常に最新の設備を置いていますからそこでの検査結果になりますが可能なら研究して取り出しましょう。」
「そうですか・・・・。とりあえず検査だけでもお願いします。」
「「止めたほうがいいよ。」」
今まで静かに話を聞いていた精霊達が二人の会話に混ざる。
「それはどういう事でしょうか?」
「うーん、この子の魔力神経と混ざったって言ったよね。魔力神経は普段見えないんだよ、それと混ざった僕達を取り除くってことは下手をするとこの子の魔力神経を傷つける事になるからね。」
「そうだよ、そうするとこの子は二度と魔力を扱えなくなるよ。それに私たちも如何なるか解らないから抵抗させてもらうよー。」
「抵抗ですか・・・。因みに、どの様に抵抗なさるのですか?クライス君の許可が無ければ起きてこれないのでは?」
「ははは、あまり僕達を舐めないでよ。この子の意思に逆らって起きるくらいいは出来るよ。」
「そうよ、この子に力を貸すとは言ったけど私達に危害が及ぶならなりふり構わないから!!!」
二体の精霊がリリカの言葉に雰囲気を変え激昂する。
クライスの意思とは関係なく両腕に魔力が集まり光と雷が生み出される。
ちょ!!!リリカ様、何挑発してるんだ。勝手に魔力集めだしたぞ!!!どうするんだよ。あ?俺の魔力も持ってかれる、やばい意識が・・・・。
「失礼しました。魔力を集めるのを止めていただけますか?このままではクライス君が意識を失いそうなので?」
「「それが僕『私』達に関係あるかな?」」
「この子の意識が無くても暫くは活動できるわよ。」
「そうだね、少しの時間でも君達を害することは可能だ。」
「では、どうれば?」
「ふん!!先程の言葉を撤回して貰おうか。僕達を調べるのは止めろ!!!」
「ええ、この子の体調等の検査は良いけど私たちを調べられるのは嫌ね。」
「クライス君が望んでも?」
「この子は僕達が説得する!!!もう僕達は一心同体だからな。」
「そうよ、この子の事は私たちに任せない。それ以外は干渉しないわ。」
「そうですか・・・、判りました。ここは素直に謝ります。」
「分かればいいんだよ。」
精霊達が集めた魔力が離れていく。もう無理、倒れる・・・・。
「クライス?しっかりして!!!」
ポス。
クライスは意識を手放しベッドへと倒れこんだ
■■■■
「あーあ。また倒れちゃった。」
「どうするのよ?この子に負担掛けたくないんでしょ?」
精霊達が私に語り掛ける。
「クライス君の負担になったのは素直に私の落ち度ですね。しかし、あなた達は流暢に話すこともできるのですね?」
「話し方など幾らでも変えられる。今はこの子の年齢に合わせているだけだ。」
「そうよ、私たちは生まれて何十年と生きてるのよ。それなりに知識も持ち合わせているわ。」
「何十年?生まれたばかりではないのですか?」
「違うね!!!僕達はあと数年で自由になるところだったんだ、それを君達人間が邪魔したんだよ。」
「ええ、私たちは自由を楽しもうとしてたのに邪魔されたのよ。これ以上私たちを怒らせないで!!!」
成程・・・、伊達に精霊を名乗っていませんね。世界の魔力の集合体、まさか上級精霊になる一歩手前でしたか。道理で、知識や力があるはずです。恐らく世界の魔力から情報を得ていたのでしょう。
推測になりますが、今回の事件で不完全な進化を遂げたと・・・。しかも、クライス君と混ざったことで違うベクトルでの進化を遂げたと。
今は一心同体、クライス君の魔力と精霊の力である世界魔力の供給。この二つが交わればどれ程の力が生まれるか・・・・。慎重に話を勧めないとどれ程の脅威になるか計り知れませんね。
「わかりました。クライス君の説得はお任せします。しかし、彼を鍛えるのは協力していただけますか?」
「それぐらいはお安い御用だ。」
「この子に死なれたら困るもの。限界まで鍛えてあげるわ。」
「幸い、この子の適性と僕達の魔力は同じ属性だ。幾らでも鍛えることは可能だね。」
「そうね、さっきは難しいことは解らないって言ったけどあれは嘘よ。ある程度は理解してると思って話なさい。この子にいきなり難しい話をしても理解できないでしょうからね。」
「そうでしたか。では時間をかけてクライス君には勉強してもらいましょうか。」
嘘も交えて話をすると・・・。これは一筋縄ではいきませんね。
幸い、クライス君の保護は出来るようですからね。
後は、クライス君と精霊達を敵に回さないように考えなければいけませんね。
「あーーーー、そろそろ僕達は眠るよ。」
「眠たい・・・。この子が起きたら一つ言っておいて。」
「何でしょうか?」
「これから一心同体で生きてくんだ。名前を付けろって言っといて。」
「私は、可愛い名前がいいかな。」
「そしたら、僕はカッコいい名前だ。」
「「よろしくね。」-。」
精霊達はリリカに一言の伝言を残し消えていく。
「ふふ、名前・・・ですか。クライス君に名づけのセンスはあるんでしょうか?」
精霊達からの名づけを命じられたクライス。
その伝言にリリカは微笑を浮かべ、意識を手放してベッドに眠るクライスを眺めるのであった。
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