第26話 融合 Ⅲ
「ふーーーむ、考えれば考える程不思議な状態じゃな。」
「僕達もビックリしてるよ。」
「私たちも如何すればいいかわからないからねー。」
「では、おぬし達二人は何ができるのじゃ?」
「出来ること?この子の力になってあげるくらいかな。」
「そうだねーーー。この子の力に上乗せするくらいはできるねーーー。」
「力の上乗せじゃと!!!どの程度じゃ?」
「うーーーん?僕達が制御できなくなるまでかな。」
「そうねーーー、私が扱えなくなるまでかなーーー。」
「なんじゃと・・・・。これは不味いの・・・・・。」
リリカが精霊達の答えに絶句して考え込んでしまう。
アーカムも事の重大さを感じ取ったのか、真剣な顔つきとなりリリカの次の言葉を待つ。
「君たちは俺に力を貸してくれるのか?」
「「君が望むならね。」」
そうか・・・。俺が望むならか・・・。とは言えこの腕をどう説明するかだよな。
いきなりこんな事になって驚いたけど・・・、起こってしまったことは仕方ないよな。
後は、精霊達とどうやって生活していくか?リリカ様やアーカム様は何を考えてるんだ?
「あ?それと君たちは普段寝てるって言ってたけど自分では起きれないの?」
「そんなことは無いよ。ただ、こうして姿を出すには君の魔力が必要だから出てこないだけだよ。」
「話をするだけなら心の中でできるよー。私達混ざっちゃったからねー。」
「もし、戦うことになったら手伝ってあげるよ。」
「君と魔力は同じだから頑張れちゃうかなー。」
「「君の中は居心地が良いからね。」」
精霊達はクライスと混ざってしまったことは仕方ないと割り切っている。
それが人と精霊の違いかも知れない。
力を貸してくれるのは有難いけど・・・。魔力なんて使ったことは少ないから困るな。
普通はギルドで講習なんかを受けてからって聞いてたからな、今度冒険者の兄ちゃんや姉ちゃんに聞いてみるか?
クライスも精霊達の話を聞き考え込んでしまう。
その間も精霊達はクライスの前で浮かぶだけで、それ以上は話そうともしなかった。
「クライスよ。今から言うことを真剣に聞くのじゃ。」
「はい!!」
リリカは考えるのが終わったのかクライスに真剣な表情で話しかける。
その雰囲気に茶会の時の事を思い出し、クライスも表情を硬くする。
「クライス君、あなたの現状を私なりに考えました。そして考えた結果、あなたには私と一緒に王都に来てもらいます。これには拒否権はありません。」
「「な!!!」」
クライスとエリスが絶句する。
二人の反応を気に留めずリリカは話を続ける。
「今回の事件が起きてしまったのは私の責任です。それによりクライス君は精霊と混ざり合うという王国の長い歴史を紐解いても例を見ない唯一の存在になってしまいました。ここまでは良いですね?」
「はい。」
「それにより、あなたの存在価値が測れなくなりました。今はこの場にいる者以外あなたの現状を知りません。しかし、今後の生活であなたが精霊と混ざりあっていると判明するとどの様なことが起こるか・・・想像できますか?」
「えーーーと、どうなるんでしょうか?」
「そうですね、残酷な言い方をしますと誘拐や殺人は当たり前になるでしょう。」
「はっ!!!なんですかそれ?」
「あなたを手に入れるために様々な人物が暗躍すると言いました。私の手が届く範囲では抑える事が可能ですがそれ以外・・・犯罪者は手段を選びません。更には、貴族の中や研究者の中でもどんなに非道な事をしてでも自分の欲求の為なら手段を択ばない人物は沢山います。あなたの存在はそれだけの価値があるという事です。」
なんだよそれ?それじゃ俺のせいで皆が危険になるってのか?それを無くす為に王都に来いと?
「クライス君が今の話を聞いて何を感じているのかは解り兼ねます。突然の事ですし、私に対しても怒りがあるでしょう。しかし、今回はそれを無視してでも王都に来ていただきます。そうすることであなたのご両親やエリスさんの家族を守れるのです。」
クライスは目の前が真っ暗になる感覚に侵されながらリリカの話を聞くことしかできなかった。
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