第24話 融合 Ⅰ

「う・・・。身体中が痛い。」


「よかった。意識が戻った。」


「大丈夫ですか?クライス君。」




目を開けるとエリスとアーカムが覗き込む形でこちらを見ていた。


エリスは涙で顔がクシャクシャの状態だ。




「えーーーと、一体何があったんだ?」


「覚えてないの!!!」


「確か・・・・、精霊を近くで見ようと・・・・・?そうだ、精霊に襲われて!!!」


「覚えているようだね。クライス君は精霊の暴走に巻き込まれたんだよ。そして、エリス君が暴走の原因となった君のペンダントを壊して助けてくれたんだ。」




暴走?ペンダントを壊した?皆にはあの声が聞こえてなかったのか?




クライスは説明されても意味が解らなかった。自分が精霊に攻撃されていたのは思い出したが何か腑に落ちずに困惑気味に尋ねる。




「三人にはあの声が聞こえなかったのか?」


「あの声・・・・?クライス君、君は何を言ってるんだ?」


「クライス・・・。声なんて聞こえなかったよ?私たち以外の会話は無かったし、クライスの叫び声しか聞こえなかったよ。」


「ふむ、まだ混乱しているようだね。もう少し横になってるといいだろう。時期にリリカ様も参られる。」




クライスが状況をまだ理解出来てないと感じたのかアーカムは休むことを提案してきた。


改めて顔を左右に動かすと自分の状況が把握できた。




ここは屋敷の部屋の一つかな?多分、助けてもらった後ベッドに寝かされたんだろうな。リリカ様は説明に、二人は看病って所かな。




「では、お言葉に甘えてもう少し目を瞑ります。」


「そうすると良い。エリス嬢、僕はリリカ様にクライス君が目覚めたと報告に行ってくるよ。」




そう言うと、アーカムは席を立ち部屋から出て行った。部屋に残された二人は微妙な雰囲気になってしまう。




「心配したんだから・・・・。」


「ごめん。まさかあんな事になるなんて?でも仕方なくないかな・・・・?」




エリスに心配をかけたのはクライスとしても心を痛めるが、まさか精霊が暴走するとは誰も想像できないから仕方ないのでは?と弁明する。




「でも、三人には声が聞こえなかったんだね・・・・・、どうしてだろう?」


「さっきも言ってたけど声って?まさか、精霊の声とか言うんじゃないよね?」


「そのまさかだよ。俺にはハッキリ聞こえてたんだ。」


「嘘・・・・!!精霊は言葉を喋れなんじゃ?」


「そこなんだよね。俺には聞こえて皆に聞こえてないのは何でだろう。」


「なんて言ってたの?」


「最初は笑い声だけだったけど、途中で『見つけた。あった。』って言われたよ。他にも何か言って様な・・・・・?」




必死に思い出そうとするクライス。その時、部屋のドアが大きな音を立てて開かれる。




「クライス!!!目が覚めて良かったのじゃ。」




リリカが勢いよく部屋に入ってきてクライスに近寄る。




「良かった。直ぐに治癒魔法をエリスが掛けておっったが中々回復せず焦ったぞ。今はわらわの従者が治癒魔法で回復させたから安心するが良い。」


「ありがとうございます。それと、申し訳ありませんでした。」


「何がじゃ?」




突然のクライスの謝罪に驚くリリカ。




「僕が精霊に近寄ったせいでこんな状況になりました。リリカ様にはお手数をお掛けしましたし、どの様な罰も受け入れます。」


「何を言っておるのじゃ!!!謝らねばならぬのはわらわじゃ。誰が近づいていきなり暴走するなど予想できようか。今回、大人しい筈の精霊が暴走する原因は判明したがその事で罰を与える事はせんから安心せよ。」


「ありがとうございます。それで精霊はどうなりましたか?」




クライスの質問に何とも言えない顔をするリリカ。




精霊が無くなったのか?それは不味くないか?




「それがなクライスよ・・・・、精霊は忽然と姿を消したんじゃよ。ペンダントを破壊した後におぬしの身体を包み込んだと思ったら消えてしまったんじゃ。」


「はい?えーーーとそれは?」


「つまり、消息不明じゃ。精霊結晶も残しておらんから死んではおらん筈じゃ。一体何処に行ったのか・・・・。」




リリカの言葉に唖然としてしまう。




つまり、精霊は何処かに行ったと。あれ?何か忘れてないか。




再び、難しい顔をして考え込むクライス。


何かが引っかかる。もう少しでこの引っ掛かりが分かりそうだと考える。




「ど、どうしたクライスよ?何か思い出したか?」


「あと少しなんですが・・・・。」


「声に関係あるのかな?」


「声?エリスよ、声とは?」


「はい、先程話してたんですが精霊の声を聞いたとクライスが。」


「なんじゃと!!!下級精霊が話したのか。」


「そうみたいです。私たちには聞こえませんでしたよね?でも、クライスはハッキリ聞こえたと。笑い声と『見つけた。あった。』って。」


「なんじゃそれは。何を精霊は見つけたのじゃ?」


「分かりません。声を聞いたのはクライスだけなので・・・・。」




困惑するリリカとエリス。アーカムは静かに会話を聞いて何かを考え込んでいる。




「あーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


「うお!!大きな声で驚かせるでない。」


「思い出しました。」


「何をじゃ?何を思い出した?」


「精霊との会話です。夢?の中ですが精霊と話しました。」




クライスは目が覚める前の会話を三人に話す。




「あれが精霊の遊び?そして、おぬしの中に閉じ込められているじゃと?」


「はい。最後には『目が覚めたら僕達を意識して』と言われました。」


「ふーーーむ。もしかしてこれが原因か?クライスよ身体は起こせるか?」


「はい、ゆっくりで宜しければ。」


「なら身体を起こしてから確認してもらうとするかの。」


「「手伝います。」」




いつの間にか現れたメイドの二人に助けられて身体を起こす。


服は着替えており一見して怪我は無いように見える。




「では、腕を見てみるとよい。驚くぞ。」


「腕?わかりました。」




クライスはリリカの言う通りに袖を捲り自分の両腕を確認する。




「何これ?俺の腕が何か凄いことになってますが?」




クライスの両腕には小さな精霊結晶が散りばめられていた。そしてその一つ一つが血管の様なもので繋がり一つの模様となっている。


右腕の結晶は黄金色に、左腕は白銀に輝いていた。


奇しくも二体の精霊と同じ輝き。


両腕を見たクライスは考えることを放棄して茫然と自分の両腕を眺めていた。

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