第23話 会話

暗い、何も見えない。身体も思うように動かないし、どうしようか?


というか、俺は一体どうしたんだ?あの後どうなったんだろう?




クライスは今の状況を考える。


周りは何も見えず身体は動かない。しかし、感覚としては水中に身体を沈めているように感じられる。


それでいて息苦しくはない。ここは一体何処なのだろうか?




その時、ふと周りから声が聞こえる。




「あれ、意識があるのかな?」


「あるみたいだね。」


「こっちの声は聞こえてるかい?」


「聞こえてるかい?」




聞いたことない二つの声。




「誰?」


「あれ、わからない?」


「わからない?」


「わからないよ。教えてくれる?」


「「おかしいな?」」


「何がおかしいんだ?」




段々、苛ついてくるクライス。声の主が判らず声が荒ぶる。




「こわいねー。」


「こわいよねー。」




相変わらずの二つの声。


クライスの苛つきが頂点を迎えようとしていた。




「わからないなら仕方ないか。」


「そうだね。」


「で、誰なんだ?」


「これでわかるかな?」


「わかるかな?」




二つの声がクライスの苛つきの声に答える。


突如、真っ暗な空間に白く輝く光と黄金色に輝く光が現れる。


二つの輝きはつい先ほどみた光だった。




「は!!まさか、精霊?」


「そうだよ。」


「やっとわかった。」




二つの声の答えに茫然とする。


精霊と会話している。しかも、何処とも分からない場所と状況で。




「本当に精霊なのか?」


「そうだよ。」


「さっき遊んだじゃん。」


「あ、遊んだ?あれを遊び?」


「あれ、違った?」


「違ったの?」




三・四歳位の子供の様な返答にクライスは困惑する。


しかし、先程の精霊ならこの状況は何なのか?考えが纏まらない。


幾ら考えても埒があかないので精霊に直接聞くことにする。




「ここは何処なんだ?知ってる?」


「ここは君の中だよ。」


「君の心の中ーーー。」




俺の中?心の中?まだ、意識は戻って無いって事か?




「そうだよ。」


「難しく言えば深層意識ってところかな。」


「考えが読めるのか?」


「少しはね。」


「ちょっとだけだよ。」




心が読まれるのに驚くクライス。


そんな状況でも精霊はお構いなしに話を進める。




「それで、困ったことになったんだよね。」


「困ってるの。」


「何に困ってるんだ。」


「遊びの最後にペンダントが壊れたでしょ?遊びに夢中になって壊れたペンダントと共に君の中に入ったら出られなくなったんだよね。」


「そう。あの後気持ちいい魔力が直ぐに君を包み込んで僕達閉じ込められちゃったんだ。」


「何を言ってるんだ?閉じ込められた?」




意味の解らないことを言う精霊たち。




閉じ込められた?出られなくなった?魔力が包み込んだ?解らないことだらけだ。




「だよねーー。」


「多分、僕らと話せるのも今だけかも知れないよ?」


「そうなのか?」


「だって、こんな事初めてだもん。」


「そうだね。聞いたことないよね。」


「でも、君の意識が戻っても話せるかもしれないよ?」


「どっちになるかは僕達もしらないかな。」




精霊は危機感が無いようにしゃべり続ける。


クライスは精霊の自我がハッキリしているのに気づく。




「君たちは元々話せれたのか?」


「少しだけだよ。」


「少しだけーーー。」


「でも、君の中に入ったら沢山話せるようになった。」


「確かに!!!君のおかげだね。」




二体の精霊は嬉しそうに感謝を述べる。


感謝を述べられたクライス。だがそのせいで、ますます混乱してしまう。




どういうことだ?俺の中に入ったら話せるようになった?




考えに考えたが答えが出てこない。


クライスが一人考えている間も精霊たちはクライスの周りを飛び回り続ける。


そして、幾らかの時間が経過したとき違う声が聞こえてくる。




「・・・ス。・・て、・・さ・して。ク・・・ス。」




心が安らぐ声だ。


その声を聴いたとたん、クライスの身体に浮遊感が生まれる。




「な、なんだ。浮かぶ?」


「目が覚めるのかな?」


「覚めるみたいだね。」




精霊達が騒ぎ出す。そして、徐々に遠ざかる声。




「目が覚めたら僕達を意識してみてね。」


「意識してみてね。」




結局、解らないままか・・・・。それにしても騒がしい精霊達だったな。




精霊達の遠ざかる声を聴きながら浮上していくクライスは苦笑いを浮かべるしかなかった。


そして、全身が光に包まれるかのように辺りが眩しくなりクライスは目を覚ます。

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