第14話 招待状

三日市が終わり、数日が経過した昼下がり。


裏庭で何時もの訓練をしているクライスとそれをベンチに座り眺めるエリス。


その二人の下にネアとリサが走りこんでくる。




「二人とも、たった今王女様からの招待状が届いたよ。」


「リリカ様・・・本当だったんだ。」


「みたいだね。どうしよう、お茶会なんて初めてだし、服装は気にしなくていいって言ってたけどやっぱり考えちゃうよね。」


「「はーーーーーー。」」


「あんた達二人揃って溜息なんてつくんじゃ無いよ!!!溜息つきたいのはこっちなんだよ?」


「だって、仕方ないじゃ無いか。普通招待状なんて来ると思わないでしょ?母さんや父さんだって信じてなかったじゃ無いか。」


「確かに、最初は信じてなかったがこうして招待状が届いたんだから信じるしかないでしょ。」




クライスとネアはリリカから招待状が来るとは信じていなかった。


多分、王族の気まぐれでは無いか?貴族でも無い平民を招待したところでリリカには何一つ得が無い。二人はそう考えていた。


エリスも気持ち半分程度でしか考えてなかったが、いざ招待状が届くと満面の笑みを浮かべてお茶会当日に思いを寄せる。何せ、物語などで語られる貴族のお茶会。年頃の女の子が夢見る行事の一つだ。


リサは満面の笑みを浮かべる娘を見て、気合を入れて化粧などを教え込まねばと一人決意する。


心穏やかでないのは二人の男親。招待の話を聞いた後は子供たちが粗相をしないか気が気でなく。招待状が届いてからは心労で胃を痛めたのか腹を抱えて蹲っていた。




「届いたものは仕方ないか。リリカ様が僕たちの事を気に入ってくれたと思うとしようか。」


「そうだね。ちなみに、お茶会っていつになってるのかな?」


「はい、招待状。これに書いてあるだろ。」




クライスとエリスはそれぞれ招待状を受け取り中を確認する。


この世界での識字率は高く。平民でも小さい頃から、週末には教会で開催される子供学校に通い文字を勉強する。なので、二人が文字を読めるのは当たり前であった。




「えーと・・・、えっ!!!!明後日?早すぎない?こんなものなの?」


「リリカ様が堅苦しいのは無しって言ってたからこの日なのかな?」


「分からないけど、これ急いで準備しないと間に合わないんじゃない?」


「準備って何を準備するの?私たちお茶会なんて初めてだし、どうすればいいか分かんないよ。」


「あーーーー、そうだよな。」




二人は手紙の内容を確認して頭を抱える。


手紙の内容が、お茶会が明後日であることと昼過ぎに使用人を迎えに寄越すと言うこと、そして会えるのを楽しみにしている。それ以外書かれていないのであった。


リリカのあまりにも簡略化された招待状。そのせいで、二人が如何すればいいかと頭を抱えるとは思ってなかったのだろう。


リリカがこの場に居れば、『それほど、難しく考えなくても良いぞ。気楽なお茶会なんじゃから。』


と言いそうである。


しかし、リリカの思惑とは逆に進みつつあるお茶会。


当日まで、二人はあーでもないこーでもないと話し合いを延々続けることになる。


そこに、二人の両親も参戦して落ち着かない準備時間となり当日を迎えるのであった。




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