第11話 魔道具

「おーい、大丈夫か?ふむ、やはりこうなるか。」


「リリカ様・・・・。彼らは、一般市民なので当然の反応かと。」




突然の第3王女の出現。クライスとエリスは空いた口が閉まらず茫然としてしまう。


それも、当たり前である。平民である二人は貴族と接する機会など殆ど無い。エリスだけは過去にアーカムからの熱烈なアタックで頻繁に出会っていたが、それは例外である。


そして、二人の思考が徐々に状況の理解ができると当然の反応が起こる。




「「お・お・お・・・・」」


「む、不味いの。」




リリカが腰の袋に手を伸ばす。




「「王女様ーーーーーーーー!!!!」」




二人の絶叫が響き渡る。




「ク、クライス。どうしたらいいの?」


「取り合えず落ち着こう・・・。えーと、平伏したらいいんだったけ?」


「そうだね。平伏して言葉をいただこうか。」




二人は取り乱しながらも地面に平伏しようとする。


それを見たリリカが二人を止める。




「そこまで畏まらなくてもよいぞ。そして、一度落ち着くが良い。」


「「は、はい。」」




二人はリリカの言葉で平伏するのを止めて一呼吸置くことにした。


そして、これだけ騒いだにもかかわらず周りが静かなのに気が付いた。




「あ、あれ。周りの人が全然騒いでない。それどころか気付いてもいない?」


「本当だ、どうゆうこと?」




二人は、左右に顔を動かして状況を把握すると困惑してしまう。


その状況をニヤニヤしながら二人を見ているリリカにクライスが気付く。




「失礼ですがリリカ様、何かされましたか?本来ならかなりの騒ぎになると思うのですが。」


「やっと気づいたか。お主たちが騒ぎそうになったので魔道具を発動させてもらった。」


「魔道具ですか。いつの間に・・・。」


「先程の大声の前にじゃよ。すまんのー、反応が珍しくて見入ってしまったわ。」


「そ、そうですか。お見苦しい所をお見せして申し訳ありません。」


「良い、良い。普段は見れない光景じゃったから楽しかったぞ。」


「リリカ様・・・・。それは少し意地が悪いかと?」


「む!!!そう思うか、アーカムよ。それは悪いことをしたかのーー。」




アーカムの注意でリリカがバツの悪そうな顔をする。


そして、リリカは自分の腰の袋から小さな水晶を取り出す。




「それが、魔道具ですか?」


「そうじゃ、わらわが開発した魔道具じゃ。」


「効果は一体何なんですか?」


「お!気になるのか?」


「はい。僕は、冒険者を目指していますので、魔道具等は気になってしまいます。」


「成程、成程。この魔道具は魔力を流せば、防音と認識疎外の結界を張ってくれるのじゃよ。」


「凄いですね!!!一つの水晶に二つの効果!!!普通に、ダンジョンでも中々御眼に掛かれない代物じゃないですか」


「ほーーーー。この凄さが解るのか。」


「それはもう。魔道具自体には知識はありませんが、その魔道具がとても素晴らしい物だというのは解ります。しかも、それを開発したのがリリカ様と言うのが素晴らしいです。」


「そうじゃろ、そうじゃろ。わらわは、自他共に認める天才じゃからな。なっははははは。」




リリカは、クライスの反応に気分を良くしたのか高らかに笑う。


その光景をアーカムとエリスは冷ややかな目で見ていた。




「た、楽しそうですね、二人とも。」


「そ、そうだな。しかし、リリカ様もあの様に笑うのだな。初めて見た。」




そんな、二人を置いてけぼりにして高笑いを続けるリリカとキラキラした目で魔道具を眺めるクライスであった。

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