第10話 出会い

「うわーーーーー。昨日とは違った物ばかりだね。」


「確かに、凄いね。これなら退屈しないで済むかな。」


「えっ!!!クライスは私と居ると退屈なの?」


「なんでそうなるんだよ。」


「だって、退屈しないって。」


「違うって!!昨日と全然品物が違うからって事だよ。」




少しの言葉の違いで、エリスは辛そうな顔をしてクライスに詰め寄る。


クライスは『失敗した』と言う顔で返答する。


エリスとの買い物が退屈なはずは無く、何故退屈しないで済む等口にしてしまったのかと頭を抱える。




「本当にーーー?」


「嘘ついてどうするんだよ。ほら、今日は昼からだから時間無いんだしさっさっと回ろうぜ。」


「うーーーー!!!納得いかないけど時間が無いのは本当だから仕方ないか。その代わり、時間一杯まで付き合ってもらうよ。」


「わかったよ。本当に口が滑ったなーーー。」




クライスとエリスは昼下がりの商業区の三日市を歩く。


前日とは違い、品物が総入れ替えされており、二人は物珍しそうに眺めて行く。


二日目の商業区は果物がメインの様で、普段では御眼に掛かれない果物が沢山並んでいる。


しかも、珍しい果物が普段より格安で手に入るようになっており、主に女性を中心に賑わっている。




「あーーー!!シロストロベリーが山盛りに積まれてる!!!あっちには猫目桃がある。」


「本当に凄い光景だな―――。シロストロベリーなんて普段なら僕の小遣いが一個で無くなる値段なのに、今日なら3個は買えるよ。」


「どれにしようかな?悩んじゃうなーーー。クライスーーー、どれにしようか?」


「そこは、エリスの好きな物にしなよ。後悔しないようにゆっくり選んでいいよ。」


「むーーーーーーーー。」




エリスは、唸るように果物の山の前で頭を抱えながら財布と睨めっこする。


その後ろでクライスは苦笑いしながらエリスを眺めていた。


かなり集中しているのかエリスは周りが見えておらず、クライスはそんなエリスを呆れ気味に眺めているので、後ろから近づいてくる人物に気付いてなかった。




「そんなに悩むなら二つとも買ってはどうじゃ?」


「そんなお金ありません。だから、後悔が無いように悩むんです。」


「そうなのか?ふむ、難しい問題じゃな。どちらも甲乙つけ難いからのー。」


「そうなんですよーーー。えっ!!!誰ですか?」


「今更、気付いたのか?余程悩んでおったのじゃな。」




エリスに後ろから話しかけた金髪の狐獣人の女性。


エルフ種の様に容姿端麗でありながら狐の耳と尻尾があることからハーフであるのは一目瞭然だが、その身が纏っている雰囲気に気圧されてしまう。


そして、その後ろには辺境伯の息子であるアーカムが立っていた。




「「えっ!!アーカム様。それと・・・・」」




二人は、突然話しかけてきたのが見知らぬ人物だったのと、その後ろに辺境伯の息子であるアーカムが立っていることに猶更驚く。




「うむ、そんなに驚かなくてもよかろうに。悩んで居るようだったから声を掛けさせて貰っただけじゃよ。」


「その通りだよ、クライス君、エリス嬢。昨日ぶりだね。」




二人は、突然声を掛けられたことに放心していたが気を取り直して挨拶をする。




「アーカム様、御機嫌よう。」


「アーカム様、お眼に掛かれて光栄です。それで、こちらの女性の方は?」




二人は改めて挨拶をした。その後にクライスがアーカムと一緒に居る女性の事を聞いてみた。




「ああ、彼女は実は・・」


「よい、アーカムよ。自分で自己紹介しよう。それと二人とも、あまり驚かないで欲しいが良いかの?」


「「そう言われるのなら、わかりました。」」




クライスとエリスはお互い顔を見合わせて、女性の自己紹介を待った。




「では、改めて。わらわは『リリカ・フォン・マルス』。魔法大国マルスの第3王女じゃ。」


「「はっ・・・・・・・・」」




自己紹介してくれた女性がまさかの第3王女。


その現実に二人は空いた口が閉まらず茫然とするしか無かったのである。

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