第5話 閑話(争い将棋 その二)
宝永六年(一七〇九)十月十一日。
争い将棋第二番。
相居飛車戦から先の対局と同様に宗銀が優勢になる。
しかし、
百六十五手にて印達の勝ち。
宝永六年(一七〇九)十月十八日。
争い将棋第三番。
先手大橋宗銀、後手伊藤印達。
相振り飛車戦となり、終盤に宗銀は上部脱出を狙うが印達は阻止。
百二十八手にて印達の勝ち。
+++
争い将棋は意外な展開を見せ、印達の開幕三連勝となる。
実はこの三つの戦いにはある共通項があった。
序盤は年長者である大橋宗銀が優勢になる。
勉強時間の差、経験の差が出たのだろう。
しかし、印達の終盤を
宗銀のほんのわずかな
宗銀は序盤の優勢を活かすことができず、印達に逆転されてしまっていた。
年齢差は四歳。
微妙な年齢差である。
もう少し離れていれば割り切れもするだろうが、近すぎず遠すぎずの年齢差がこの結果を招いていた。
ただ一つだけ確実なことがあった。
終盤の天才。
相手の王様を詰ます才能において、明らかに印達は宗銀を
そして、第三番終了から四日後に行われた『御城将棋』にて、ある事件が発生する。
それもこれも、全ては『争い将棋』のこの三つの対局が招いた――災い、だったのかもしれない……。
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