第4話「召集」
王が謁見の間に向かうと既に呼び寄せた四人が集まっていた。
広い城内だ。この短時間で集めるのはセレシア一人では無理だろうに、きっと他の誰かにも頼み、手分けしながら集めてくれたのだろう。
彼女は詳しい状況も聞かされていないのに。
王は玉座の傍らに立つセレシアに、ありがとうと小さな声で感謝の意を示した。
セレシアはとんでもございません、と同じく小声で軽く首を振る。
王は玉座に腰掛け、改めて呼び集めた四人を見渡した。
四人とも横位一列に並んで片膝をつき、王に頭を下げた状態だ。
「顔を上げてくれ、四人とも。大事な話だ、よく聞いて欲しい」
四人の若者達はその言葉を聞くと、顔を上げ、立ち上がり、王を真っ直ぐ見つめた。
若者達の澄んだ瞳。誠実な眼差し。
王たる自分に向けられたその若者の視線を一身に受け、これから告げる役目に彼らはどれだけの責任を感じるのだろうかと考えていた。
王は伝書鳥に書かれた内容と、そこから汲み取れる事情や注意点を交えながら四人にわかりやすく説明していった。
……十分後。
「……そして、お前達に頼みたい事はそのリリアナ修道士の護衛だ。お前達にとって最優先事項だと思ってくれ」
王からの説明を受け、揃った声でハイ、と返事をする四人。
さすが優秀な腕を持つ者達だけあって顔を曇らせためらう様子を見せた者は誰一人いなかった。
むしろ、任せてくれと言わんばかりの自信すらうかがえる。
まだ全員二十代だ。それでいてこの自信に満ちた態度は、この王の期待に精一杯答えたいとする姿勢が感じさせるものだった。
その四人の顔を見ていた王は、そうだ、と思い出したように口を開いた。
「もう一人、護衛として呼び寄せた者がいる。城下町の郊外に住むアンデッドハンターのセインという。この国の郊外にもヴァンパイアやアンデッドモンスターの類が出没する。その際には毎回このセインとシータス率いる聖騎士団に駆除を頼んでいる。だからシータスは彼と顔を合わせる事が多かろうな。シータスは知っているだろうが彼の腕もまた優秀だ。きっとお前たちの力になってくれるだろう」
セインという存在にシータスも若干安心したような顔をする。
「そうですか……!確かに、セインは優秀です。彼がいるのは心強いです。ありがとうございます」
シータスのこの言葉に隣にいたハンター部隊から呼ばれたイリヤが反応した。
「俺は名前を聞いたことあるだけであんま知らないんだけど……シータス、どんな男なんだ?」
「うーん、どんな、かぁ……」
シータスが返答を考えているとそれの返答を待たずして今度は魔術師団所属の僧侶ラビアンが口を開く。
「城内の者じゃなく城下町の人間なんて……大丈夫なんですか?」
この問いには王やシータスじゃなくラビアンの隣に立つ狙撃部隊のアリスがフォローをいれた。
「城の人間じゃないからこそ知識も腕もありそうじゃない?陛下が抜擢されてるのだからきっと頼りになるわよ!シータスからも信頼されてるみたいだしね!」
ラビアンは、それもそうかと言いたげに軽くため息をついた。
王は続けた。
「そしてリリアナ修道士だが、恐らくあと一時間後には到着するだろう。しかしお前達に紹介するのは明日にする。今日は自分達の部屋へ戻り、明日からの旅の準備をしなさい。必要ならば明日からの旅の打ち合わせなどするように。わかったな?」
ハイ、とまたも揃った声で返事をした四人は丁寧に王に礼をした後、静かに謁見の間から退室して行った。
四人全員が退室するのを見届けた王は、疲れたような表情を浮かべため息をつきながら呟いた。
「……セレシア。レックスは少し遅いと思わないか」
セレシアもため息をつきながら片手でこめかみの辺りをおさえて呆れていた。
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