犯罪都市 ― The Outlows ―
玉置レナ (1)
誓いを守り、正しき事を成さんとすれば、それを阻む者が現われるでしょう。
その時は、敵が神々であろうと恐れず立ち向かいなさい。
立ちはだかるのが
それこそが「
S・S・ラージャマウリ監督「バーフバリ 王の凱旋」より
『区内で不測の事態が起きているようです。これから言う区域が家か通学路の人は、事態が沈静化するまで下校を控えて下さい』
良く有る校内放送。週1回のペースで起きてる事を「不測の事態」と呼ぶのには違和感が有るが。
『おい、何だ、今の不穏な放送は?』
電話相手の高木瀾はそう言った。夏休みに知り合った「本土」の高校生。ちなみに、彼女が通ってるのは
「あ……こっちでは、良く有る事」
『なぁ……本当に、
「考えとくよ……」
電話の向こうで、「おい、望月、ノートPC貸して」と云う瀾の声がする。
どうやら部室に居るらしい。ちなみに、前に聞いた限りでは「電子工作部」と「プログラミング部」が共同で使ってる部室のようだ。
なお、夏に、この「島」で起きた騷ぎに関わった「本土」の高校生3人は同じ学校の理数科に通っていて、瀾と今村君が電子工作部で、望月君がプログラミング部に入っている。
『今……そっちの街頭監視カメラの映像を見てる』
この「秋葉原」地区……なお、火山灰に埋もれてしまった「本当の東京」の「本当の秋葉原」ではなく、あくまで、いつの間にか公称と化した通称……の自警団が2つに増えて、競争が始まった事で、両方の自警団が住民の支持を得る為に、色んなサービスをやるようになった。街頭監視カメラを置いて、映像をWeb上で公開するようになったのも、その一環だ。……先に似たような事をやってた「有楽町」地区みたいに、夜中にカメラ目線の露出狂の変態の姿が全世界に配信されてしまう事が、たまに有るが。
『何か……変だぞ……』
「どうしたの?」
『そっちの島の連中じゃない……何で、Site04の連中が、そっちで喧嘩をしてる?』
「どう云う事?」
十年前、富士山の噴火で、日本の首都圏と山梨・長野・静岡の大部分、そして中部地方の一部は壊滅した。生き残った人達は、被災地に残ったり、他の地域で新しい仕事や家を見付け……そうでない人達は、日本各地に作られた「人工の島」に住む事になった。
あたし達が住んでいるのは、唐津と壱岐の間に有る正式名称「Neo Tokyo Site01」……通称「千代田区」。
他には、広島沖にSite02……通称「渋谷・新宿区」が、仙台沖にSite03……通称「豊島区」が、壱岐と対馬の間にはSite04……通称「台東区」が有り、北陸にSite05が、長崎本土と五島列島の間にSite06が建設中だ。
つまり、Site04は、「他の東京」の中で、この島に一番近い「東京」。フェリーで片道1時間強だ。
『男も女もスキンヘッドで首にゴツい数珠を付けた連中と、背中に七福神の絵柄のスカジャンを着た連中が「秋葉原」でドツキ合いをやってる』
多分、スキンヘッドの方は、Site04の自警団の1つ「寛永寺僧伽」。スカジャンの方は、同じくSite04の自警団の1つ「入谷七福神」。
どっちも……メンバーの多くは「魔法使い」だ。
で、問題が1つ。「秋葉原」の2つの自警団「サラマンダーズ」も「Armored Geeks」も「魔法使い」は大の苦手なのだ。
『お……おい……どうなってる? あの時の「神保町」の女の子が抗争場所に居るぞ』
「えっ?」
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