第25話 そのまま聞いて。
「ひゃ……っ!?」
俺の指が恐る恐るそのお腹に触れると、瑞菜はぴくっと震えて声を漏らした。慌てて俺は手を引く。
「くすぐったいよぉ……」
「す、すまん」
「今度はもっと、ちゃんと触って。……その方が、いいと思うから」
「あ、ああ……」
もう一度、右手を伸ばす。
そして今度はしっかりと、その掌で瑞菜のお腹を撫でた。
「あっ……んッ……~~……っ」
瑞菜がまた、ぴくりと身体をよじらせてくぐもった声を上げる。
だけど、俺はもう止まらなかった。そのお腹の感触を、手のひらに焼き付けるようにゆっくりと撫でる。
温かくて、すべすべしていて、とてつもなく気持ちがいい。ずっと撫でていたいとさえ思える。
こそばゆさに耐え、漏れてしまう声を必死に堪えようとしている瑞菜の存在もまた、俺の興奮を掻き立てた。
そして気づけば俺は右手だけでなく、身体、いや顔ごと瑞菜のお腹へと寄せてしまっていたらしい。ソファーから降りて、瑞菜のお腹を覗き込むようにしゃがんでいた。
目の前に、瑞菜のお腹がある。
興奮からか、フーッと鼻息が漏れた。その息が瑞菜のお腹、おへその辺りに吹きかかる。
「ぴぁ……っ!??!!」
驚いたのか、瑞菜が先ほどまでで一番大きな嬌声を上げる。
そしてビクンッと身体が跳ねた。
「~~……っダメ! もう終わり! もう限界……~~~~っ!」
「うおっ!? な、なんだ!?」
次の瞬間、視界が黒に染まった。
暗闇から抜け出そうとするが、頭を何かに押さえつけられていて動けない。
(なんだこれなんだこれ!? どうなってるんだ!?)
「お、おい瑞菜!?」
「ふぇぇ……~~~~~~っ」
呼びかけるが、瑞菜は未だに羞恥に悶えているらしい。返事をしてはくれない。
(いや、ちょっと待てよ……? この暗闇ってもしかして……)
ある可能性に至って、一気に頭が正常な働きを取り戻していく。
俺はいまさっき、瑞菜のお腹の目の前にまで顔を寄せていた。
そして今は、押さえつけるように何かを頭に被せられた状態。顎のあたりには、明らかに瑞菜のものと思われる体温を感じる。
つまりこれは……
(瑞菜のパジャマに包まれてるのか!?)
つまり今の頭は今、瑞菜のパジャマとお腹にサンドされている……!?
それから、顎のあたりに感じるこの温もり、これはおそらく瑞菜の太ももだ。パジャマに包まれているということを覗けば、膝枕に近い状態と言ってもいいのかもしれない。
(あ、やば……)
そんなある種の楽園のような状態にいると気づいた瞬間、また興奮が押し寄せそうになる。何せ俺は今、瑞菜の身体に包まれているようなものなのだ。それも瑞菜は風呂上がり。どうあっても、そこにはオスを誘惑するような香りが広がっていた。
(……まずい。まずいってこれは! こんなことされたら理性とか持つはずないって! 瑞菜さん!?)
俺は必死にバタバタと手を動かし脱出を試みるが意外なほどがっしりと俺は捕まっているらしい。逃げられない。
しばらくそんな状況が続いたが、不意に視界が開いた。世界に色が戻る。
「ぷはっ」
「ごめんね、苦しかった?」
さらりと、瑞菜は俺の頭を撫でる。
「……瑞菜? 落ち着いたのか? それならいい加減――――」
「ダメでーす」
頭を起き上げようとした俺を、瑞菜は優しく抑える。今はもう完全に、膝枕をされているような態勢だ。
「ねえ、ゆう。そのまま聞いてくれる?」
「いやでも……」
「そのまま聞いて」
完全に落ち着きを取り戻した様子の瑞菜の、真面目な声音に俺は押し黙ってしまう。
しかし、その声音を聞いて俺の方も興奮が鳴りを潜め始めていた。
もう心臓もうるさくはない。だから、このままでも問題はなさそうだ。
「今日、何かあった?」
「……え?」
瑞菜の思わぬ問いかけに、掠れた声が漏れた。
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