第24話 もっと、ちゃんと見て……?
夕食後、リビングで適当なバラエティー番組を見て暇をつぶしていると、ちょこちょこと駆け足の瑞菜がやってきた。
すでに風呂上がりのようで、少しダボダボのパジャマを着ている。
瑞菜はソファーに座る俺の隣に腰かけた。そして俺の服の裾を控えめにちょんと握る。
近い。すぐ真横だ。ほぼゼロ距離。ピンクラベンダーに髪が頬をくすぐる。風呂上がりのシャンプーの香りが押し寄せる。風呂で火照った身体の温かさを感じる。
「……なあ、暑いんだけど」
俺はテレビに視線を向けつつ、瑞菜を片手で引きはがそうとする。
「だーめ」
しかし引きはがそうとしたせいで逆により近くへ引っ付こうとする瑞菜。
「暑い……」
「あったかぁい」
えへへと瑞菜は顔を綻ばせた。
風呂上がりの瑞菜はいつもこんな調子だ。家の中で長時間俺をひとりにしたくないらしい。もうこの生活も1週間が経ち、俺が逃げないということは分かってくれたようだが、それでもなぜか甘えがちになる風呂上がりだ。
「めんどくせ……」
小さく呟いた俺は瑞菜を気にすることをやめ、テレビに集中することにした。
正直、瑞菜にばかり気を取られていたら正常の男子高校生たる俺がこんにちはしてしまいそうなのだ。それほどに女の子の風呂上がりというのは刺激が強い。
無防備がすぎるんだ。その上、相手が瑞菜となるとどうしてもあの夜のことが頭をよぎる。それはいくら理性を固く持とうとも、興奮を呼び覚ますには十分すぎるものだ。
そんなこんなで健常なる性欲にムラムラとした感情を少なからず抱いていると、ふとテレビの電源が落とされた。リビングに静寂が訪れる。
「あ? 瑞菜? テレビ消したか? ――――てぇ!?」
隣を見れば、いつの間にやら瑞菜は俺から人一人分くらいの距離をあけてソファーに座っていた。
――――パジャマをぺろんとめくり、お腹を露出させた状態で。
「おま、おま何やってんのぉ!?」
「……お、おなか…………」
「はぁ?」
瑞菜は顔を真っ赤にして、たどたどしくゆっくりと口を開く。
「こ、このまえ、太るとかって言われたから。太ってないこと、証明したくて……うぅ……」
「いやおまえ……だからってなぁ……!」
この前というのは、牛丼を食べに行った時のことだろう。メガ盛りの牛丼を食べる瑞菜を散々弄り倒したような気がするが、案外本人は気にしていたらしい。
「さっさとしまえって!」
俺が言うと、瑞菜はいやいやと首を横に振る。
そして震えた声で言葉を続けた。
「わ、わたし、おなかはけっこう自信あるんだよ?」
目を逸らす俺に、瑞菜は誘惑するように甘く囁く。
「もっと、ちゃんと見て……?」
「……っ」
「見て、いいんだよ……?」
「……~~~~あーもうわかった! 見ればいいんだろ見れば!」
俺はぐいっと顔を瑞菜に向けた。
見たいという気持ちはもちろん、あった。だから、瑞菜の紡ぐ甘い言葉に逆らうことができなかった。
そして何より、今だからこそ言おう、今だからこそ、こんなカミングアウトも許してほしい。
俺は何を隠そう、……お腹フェチなのだっ!!
美少女のお腹が大大の大好きなのだ!
「…………」
瑞菜を今一度見たその瞬間、息が止まるかと思った。
それほどの興奮。間違いなく、今の俺はキモい顔をしているだろう。
瑞菜の白く綺麗なお腹に、目が釘付けになる。風呂上がりで少しだけ赤く火照りを残すそれが、ひどく色っぽく思えた。
そしてそのお腹は瑞菜自身が言った通り、太っているように見えることなんてなくしっかりと引き締まっている。その上、腰のくびれによって生まれるそのしなやかなライン。小さくて可愛い、へその窪み。
そのすべてが、俺の思う理想形と言っていい。
「……どう?」
瑞菜が羞恥に涙を浮かべながらも問う。
俺にはすでに、どう答えたものかなどと考える余裕はなかった。
自然と、言葉が口から出てしまう。
「……綺麗だ」
「ほ、ほんとに……!?」
「ああ。すごく、綺麗だ」
「そ、そっか……えへへ……。さ、触ったりしても、いいんだよ?」
「いいのか?」
「もちろん、だよ?」
俺の反応に気を良くしたらしい瑞菜は途端に少し余裕を取り戻して、艶めかしく笑みを浮かべる。
俺はその誘いに逆らえるはずもなく、ゆっくりと右手を伸ばした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます