第4話 み、見ないでぇ……っ!?
ふと、カーテンの隙間から朝日が差し込んでいることに気づいた。
とっくに夜は明けてしまっていたらしい。今更過ぎてどうでもいいが、正真正銘、俺は瑞菜と一夜を共にしたということになる。
思い返してみて、気になったことと言えばやはりあのジュースだろうか。変な味だとおもいながらもグビグビと飲んでしまったあのジュース。
あれはきっと、酒か……あるいは……。
そうじゃないと、突然理性が保てなくなったことへの説明がつかない。幼馴染と二人きりという状況から勝手に興奮し、理性を手放した童貞がいるとは思いたくない。
だって俺には、好きな子がいるんだ。
正気であったなら性欲のままに行動することなんてない。理性を保っていられたはずだと自信を持って言える。
しかし、だからといって何だと言うんだろう。
それを仕組んだと思われる瑞菜には多少怒りを覚えないでもない。それをこれから問い詰めることもできる。
でも、そんなことをしたとしても俺が瑞菜を抱いたという事実が変わることはない。それは一生、なくならないんだ。
俺はこれからどうするべきなのか。その答えは出ないまま、またしばしの時間が過ぎた。
「う、うーん……」
寝苦しそうに身じろぎした瑞菜がうっすらと瞳を開く。
ようやく目を覚ましたらしい。
これでやっと話ができる。話すべきこと、聞くべきことはいくらでもあるんだ。
「やっと起きたかよ」
「うん……?」
瑞菜は寝ぼけたままにぼんやりと俺を見つめた後、やっと状況を思い出したとでも言うようにゆっくりと身体を起こした。
「おはよ~、ゆうくん」
「のんきだな、おまえ……。でもまあ、おはよう――――ってぇ……っ!?」
俺は慌てて瑞菜から視線を逸らす。
俺の様子を見て、瑞菜が「どうしたの?」と問うようにこてんと首を傾げる。
「お、おまえっ、服、服! ぜんぶ見えてるからぁ!?」
「……ふぇ?」
身体を起こした瑞菜からはスルッと掛布団が落ちてしまっていた。
それと同時に白くきめ細やかな肌があらわになっていたのだ。
瑞菜は自分の身体に視線を移し、その恰好を理解すると途端にカァッと顔を赤らめて布団を手繰り寄せた。
「み、見ないでぇ……っ!? っていうか、あんたもそれ隠しなさいよバカぁ!?」
「グエッ!?」
瑞菜の投げた枕がクリーンヒットして仰向けに倒れそうになる俺。
そうだった……俺も裸だった……。
というか、何でそんなに恥ずかしがってるんですかね……瑞菜さん、ビッチなんじゃなかったの……?
いや、違うかもしれないんだよなと。あの時、彼女の肌に流れた赤い一筋を思い出す。
人の噂なんか、あてになりゃしない。そんなものよりは、自分と、彼女が過ごした幼い頃の思い出の方がよっぽど確かなものなのかもしれない。
でも……クソっ、俺ってばもう……純愛厨としては完全に詰んでるんじゃないか……?
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