第48話 アート=シルバーマン05
「何だすコレ?」
とはシルバーマンさん家のアートさん。
今日も輝くシルバーヘアー。
なんか巨大な石像とかにしたら邪教の御本尊になりそうな美貌の持ち主です。
もしくは蝋人形。
専用の下駄箱を開けてのご感想。
付箋がペタペタ貼ってある。
要するにアートとお近づきになりたい勢力が、ラインや電話番号を付箋にしてコミュニケーションを図ろうとの策謀。
「はー」
よく分かっていらっしゃらないらしい。
ちなみにラピスと四谷も似たような状況。
「かしまし娘だな」
久遠が最終的にそう論評。
だいたい正解と言えるだろう。
実際に僕の感想も似たような物で、この三人は何かと突出している。
白髪赤眼のラピス。
茶髪茶目の四谷。
銀髪碧眼のアート。
一人とってもちょっと見ない美少女。
三人揃えば文殊菩薩。
合体したら阿修羅になるでしょうか?
まぁ四谷はともあれ、アートはくしゃみで大恐慌を起こせるし、ラピスはその気になれば太陽系程度は欠伸で破壊できる。
なんで人類滅んでないんだろね?
露骨特異点。
無尽蔵のエネルギー。
物理学の通用しない方程式世界。
かつ時空の歪み。
本来なら宇宙に矛盾が生じないように事象の地平面が覆うところだけど、「南無三宝」ラピスは体内で調整内封していると。
純粋数学演算。
それは後で聞いた話。
「なにゆえ僕にー?」
今はアートの人気の方だろう。
そこで自覚が無いのは天然なのか。
あるいは計算なのか。
でも財閥令嬢を目の前にして「醜女め」と批難できる人間もいないだろうから、いわゆる客観的なデータが取りづらい例ではありましょうぞ。
「綺麗でいらっしゃいますから」
カラカラと笑うは久遠。
「久遠に一票」
「以下同文」
とは僕と四谷。
「お三方は口が上手いだすね」
「言い訳と屁理屈は日本人の性分です故」
言ってて悲しくなるけど。
「ラピスもそうだけど四谷もでしょ」
「だね」
「ビッチですから」
「いい加減にして欲しいんだけど?」
「喧嘩なら買いますが? いえ、元はと言えばこっちから売ったのでしたね。では決着でも付けましょうか?」
熱線が無尽蔵に奔った。
まるでトラップやセキュリティの赤外線を目視化したように、空間から空間へ熱線が直線で奔り、四谷に冷や汗をかかせる。
「わお! システムメギドフレイム!」
アートが正解。
「ビッチにだけは兄さんを渡せません」
「勝手に決めるなし!」
「殺しはしませんから、そちらについてはご心配なく」
ヒラッとラピスは手首を回した。
勝ち誇っているとこ悪いけど、四谷も大切な僕の友人なんだけどなぁ。
「結局アートはどうするんですか?」
「あーまりフレンドしたいとも思えませぬが」
「でしょうね」
ラピスも同意見の御様子。
「陛下はどー思われす?」
「お好きにどうぞ」
関知することでもないだろう。
アートの恋愛観にケチを付けるつもりはないし、また制限を掛ける権利も有してはいないだろう。
「陛下の側室とっては独占欲を所望したいすけど」
そんな趣味は持ち合わせてござんせん。
「四谷は?」
「要らない」
「ビッチなのに?」
「ビッチじゃないし!」
「妥協案とはお似合いでは?」
「妥協案……」
複雑な声質の久遠でした。
いまだ理由は教えていない。
いや、教えたところでどうなるものでもないし。
「とこで陛下。ならび閣下」
「へえ」
「はあ」
「朝もはよからなんですが」
ポヤポヤとアートは表情を緩めていた。
「今日の夕食のご予定は?」
「兄さん頼りです」
「スーパーを覗かないと青写真が描けない」
「ではレストランにお付き合いされてなりけれいいでしょか?」
「そりゃまぁ」
「構いませんよ」
「四谷と久遠はどしま?」
「司馬が行くならあたしも当然」
「タダ飯は好きだぞ?」
「じゃ、その、とりで」
付箋を全て剥がして昇降口の隅っこのゴミ箱へイン。
「いいの?」
「たぶんのしょうぶんでだいじょーぶい。僕としましてーも、愛無き睦言は空言にそーいがなくなしてー」
春のなんと無情な事よ。
もう夏だけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます